2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520401
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉原 達 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40113138)
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Keywords | 中国人強制連行 / アジア・太平洋戦争 / 日中関係史 / 戦後補償 |
Research Abstract |
1.訪中調査関係。本年度の研究実施計画の第一に、「緊急性を有する生存者・遺族の聞き取り調査」を掲げた。そこで、平成16年7月には、かつて広島に連行された中国人生存者・遺族を訪ねて、青島市へ赴き、また平成16年12月には、かつて大阪に連行された中国人生存者・遺族を訪ねて、河北省石家庄市および河南省原陽県へ赴いた。いずれの場合でも、連行時および日本の現場での労働や生活の実態、帰国後の困難などについて、新しい知見を得た。また河南省原陽では、大阪港の安治川および川口のふたつの事業場の関係者によって、それぞれ受難者聯誼会が結成されたという消息を得た。今後、いっそうの調査が可能となることが期待できる。 2.国内現地調査関係。日本国内では、広島県広島市、長崎県長崎市、山口県下関市で、調査を実施した。下関は、戦時中に日本に連行された中国人が最初に上陸した港のひとつである。同港を見学するとともに、「門司検疫所彦島措置場」跡地を確かめ得たことは、連行の痕跡をたどっていく作業を進める上で、とくに有意義であった。 3.文献資料関係。情報公開法にしたがって厚生省文書の閲読を開始することができた。これは、昭和33年〜44年に厚生省が地方自治体に要請して、中国人死没者の遺骨調査を継続的におこなった件に関する資料である。現在分析中の外務省文書とつきあわせながら、戦後日本における当該問題の処遇について、更なる調査を進めたい。 4.本年度は、外務省文書を基礎にして、戦後日本における中国人強制連行問題に光をあてた論文を執筆したが、単行本への寄稿論文であって、その書物が次年度に刊行されることになったことを付記する。
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