2004 Fiscal Year Annual Research Report
南九州・薩南諸島・奄美諸島における琉球系民俗芸能の研究-境界領域における民族的異文化イメージの形成と伝承-
Project/Area Number |
15520533
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
笹原 亮二 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 助教授 (90290923)
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Keywords | 異文化表象 / 琉球人踊 / 南九州 / 奄美諸島 / 民俗芸能 / 風流 |
Research Abstract |
今年度は、奄美諸島の琉球系・ヤマト系芸能に関しては、奄美大島において、八月踊・油井豊年祭・諸鈍芝居、沖永良部島について各種遊び踊や三線に関する現地調査を行ったほか、沖縄県立図書館・沖縄県立芸術大学附属研究所・和泊町立歴史民俗資料館・和泊町立図書館・知名町教育委員会・鹿児島県立図書館奄美分館・名瀬市立奄美博物館において、文献・映像資料等の関連資料・情報の調査・収集を行った。薩摩藩領の琉球系・ヤマト系民俗芸能に関しては、薩摩半島において琉球傘踊等の風流系の踊について現地調査を行ったほか、鹿児島県立図書館・鹿児島県立歴史センター黎明館・鹿児島国際大学において、文献等の関連資料・情報の調査・収集を行った。その他の日本本土各地の異文化イメージが認められる民俗芸能に関しては、唐人踊等、趣向に異国的な形象が認められる民俗芸能について、各地で現地調査・関連資料・情報の調査・収集を行った。 その結果、奄美地方各地では、琉球・ヤマト両系統の芸能が、各地域の人々が様々な芸能上演を尽くす豊年祭等の祭の場を母体として受容され、上演されているが、同じ奄美地方でも徳之島以北と沖永良部島以南では受容・上演の様相に違いが認められることが確認できた。特に注目されるのは沖永良部島で、そこでは現在、琉球系芸能的要素がかなり強固に認められるが、明治よりも前からの伝承とされる音楽・芸能には琉球系とはやや異なる独自性がみられること、日本本土との関係を示す口頭伝承や芸態を有する民俗芸能が意外とみられることなど、興味深い様々な問題点が明らかになった。旧薩摩藩領の民俗芸能に関しては、異国・異文化的形象を趣向とする民俗芸能が、願成就やホゼ等、地域の人々により芸能尽くしが行われる祭りの場を母体として行われてきたという、奄美地方と類似の状況があったことが確認できた。 そのほか今年度は、長崎県五島地方に関しても現地調査を行った。同地方は、かつては遣唐使の航路にもなっていて中国との境界領域に位置するが、そうした交渉を伝える史跡等は見られるものの、奄美地方のように祭りや芸能や音楽といった民俗文化レベルでの異国・異文化イメージの伝承はほとんど認められなかった。両地方は境界領域に位置しながら、何故そうした差違が生じるのか、対馬・壱岐・隠岐等、五島と同様の地理的条件にあるほか地域とも比較しつつ、検討する必要があるという新たな問題が浮上した。
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Research Products
(2 results)