2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530153
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
荒井 一博 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40134879)
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Keywords | 信頼の醸成 / 信頼と能力 / 信頼と外的圧力 / 信頼と自己利益 / 信頼と組織 / マスメディアと信頼形成 / 信頼と権限 / 信頼と統計的差別 |
Research Abstract |
平成16年度には、前年度と本年度に執筆した計二論文を刊行した。また本年度中に執筆し現在印刷中で、平成17年6月ごろに刊行される予定の論文が一本ある。 平成16年度に執筆した第一の論文では、組織や社会において信頼をいかに醸成すべきかを論じた。まず場によって求められる信頼の「濃度」が異なること、信頼の構造には多様性があることなどを指摘した。次いで価値の形成と共有を図る際に重要となる家庭や学校、組織や職業集団、マスメディアの問題を論じた。その後で、同情や感情移入の問題、信頼に反する行動をとる個人に対する制裁の問題を議論した。さらに、権限や統計的差別や非公式集団をどう考えたらよいかを論じた。最後に、具体的な信頼醸成方法を明示した。 本年度に執筆した第二の論文では、信頼と能力・外的圧力・自己利益の関係を検討した。多くの信頼研究者は、信頼は意図の問題で能力・外的圧力・自己利益に影響される行動を信頼に値する行動とみなさない。それに対して、筆者はそれらの相違を識別することが困難であること、また識別しても特に有用な分析ができるわけではないことを論じた。そして単に信頼の存否を議論するのではなく、経済学では効率性の基準によって個人の行動や制度の正否を判断できるので、それを信頼研究にも適用すべきであると主張した。信頼は組織や社会のあり方の一部として評価する必要があることを強調した。 以上のほかに、平成16年度にはカナダの大学を訪問して、心理学者や経済学者と話合いを持った。さらに本年度には、前年度にこちらから出向いて会つた研究者と共同研究を進めた。また、彼らが来日して話合いを行った。
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Research Products
(3 results)