2004 Fiscal Year Annual Research Report
岩手県の民俗芸能と学校教育〜中野七頭舞と剣舞を中心として〜
Project/Area Number |
15530561
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
島崎 篤子 岩手大学, 教育学部, 教授 (30322960)
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Keywords | 民俗芸能 / 中野七頭舞 / 中里七ッ舞 |
Research Abstract |
第2年次研究である平成16年度研究内容としては、4月当初に次の5点を計画していた。 (1)小本小学校が伝承している中野七頭舞・中島七ッ舞・中里七ッ舞の三種の七頭舞と大牛内分校が伝承している大牛内七ッ舞に関する基礎研究を継続する。 (2)小本小学校においてこれらの芸能が教育活動としてどのように位置づいているのかを明確にする。 (3)七つ物を含む剣舞に関する基礎的な研究とそれらの伝承校に絞ったフィールドワークを行う。 (4)岩手県教育委員会等による民俗芸能に関する調査の分析に着手する。 (5)創造的な音楽学習の視点から、岩手県の民俗芸能と音楽あそびや音楽づくりの可能性を探る。 しかしながら、(1)と(2)の研究に時間がかかり、実際には(3)から(5)については十分な成果が見られなかった。したがって最終年である次年度に取り組むことになる。 16年度研究においては、中野七頭舞以上に中里七ッ舞に焦点を当てて研究を行った。その主な理由は、中野七頭舞については既に全国的な広がりと研究的な蓄積がある一方、中里七ッ舞は中野七頭舞を凌駕する舞いの美しさをもっていながら、知名度も低く、また興味深い独特な伝承がなされているからである。すなわち、通常、伝統芸能で伝承する際に多用されている口唱歌が整備されていないにもかかわらず、音楽や舞いの伝承が成立している。太鼓奏者が、自分自身で自分だけがわかる口唱歌の工夫をしたり、踊りの伝承者である個々の子供が原型を尊重しつつも自分たちなりに洗練させたりしている、という興味深い実態がみられるのである。 16年度研究では、担当授業「保育内容(音楽)」において、中里七ッ舞の会長を3回招聘して、学生に「道具取り舞」を学ばせるという実践的試みを実施した。笛の伝承者がいない中里七ツ舞では、外部の公演のたびに黒森神楽の笛奏者に即興演奏を依頼しているという実態がある。したがってこの実践的試みに先立ち、昨年度の公演ビデオから「道具取り舞」の笛と太鼓の楽譜を作成し、まずはリコーダーを活用しつつ学生の手で「道具取り舞」の音楽を再現することができた。「七つ物」には、「道具取り舞」以外にも複数の舞がある。研究対象を広げすぎるよりも中里七ッ舞に焦点を当てながら、「七つ物」の研究および創造的音楽学習への広がりを追究する方向が、より意味のある研究になると確信している。 次年度の取り組みは厳しくなりそうだが、何とか研究のまとめを行いたいと考えている。
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