Research Abstract |
ヘテロシスを利用したF1品種の育成は中国におけるイネ収量の飛躍的向上に大きな貢献を果たしているが、その機構はほとんど研究されていない.本研究では,広親和遺伝子を利用して雑種不稔の発現しないイネの遠縁雑種を材料に、ヘテロシスの遺伝的機構を解析した. インド型と日本型の雑種にインド型または日本型を戻し交雑した2集団を用い,SSRマーカーにより染色体地図を作成した.B1F2系統を用いて,幼苗時の形質,成熟期の葉緑素含量,生葉数などのQTKを検出した. 粒幅に関して染色体1,2,5,7に5つのQTLが,千粒重に関して染色体4,5に2つのQTLが,また,幼苗重に関して染色体5,6,12に4つのQTLが,さらに,第1葉葉長,幼苗草丈,葉緑素含量に関してそれぞれ染色体1,3,6に1つずつのQTLが検出された.各QTL近傍のマーカーについて,2つの戻し交雑集団を用いて遺伝子型AA, Aaならびにaaの個体の表現型を比較した.ヘテロ接合体Aaがホモ接合体AAまたはaaより優れている例はなかった.正の相加効果はインド型親の対立遺伝子が正の相加効果を示す場合と日本型親の対立遺伝子が相加効果を示す場合がみられた.以上の結果から,日印交雑にみられる高度のヘテロシスは,ヘテロ接合となった多数の遺伝子座における不完全優性効果の集積によるものであり,超優性の効果ではないこと結論される.
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