2004 Fiscal Year Annual Research Report
トランスジェニックマウスモデルを用いた肝発がん制御分子の研究
Project/Area Number |
15590631
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Research Institution | KANAZAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中本 安成 金沢大学, 医学部附属病院, 講師 (40293352)
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Keywords | 癌 / ゲノム / ウイルス / 応用動物 / 内科 |
Research Abstract |
慢性肝炎から肝がんへ進展するB型肝炎ウイルス表面抗原のトランスジェニックマウスモデルを用いて、肝発がんの病態機序を解析するとともに、発がんを制御する分子のスクリーニングを進めた。本年度の検討結果は、以下のごとくである。 a)肝発がんの病態の検討として、肝炎の誘導の際に行う各種の細胞免疫学的操作によって、前がん状態の異形性が変化し発がん率に違いが生ずることが分かった。異なるリンパ球分画によって誘導した慢性肝炎を観察したところ、CD8+ Tリンパ球、CD4+ Tリンパ球、B(CD19+)リンパ球の順に肝組織の異形性の程度、発がん率(それぞれ、86%、24%、0%)に寄与していることが明らかになった(Cancer Res.64:3326,2004)。 b)これまで肝細胞障害に重要なFasリガンド(FasL)を介する経路を抑制すると、肝炎が軽快し発がんが著明に減少するという結果を得ているので(J.Exp.Med.196:1105,2002)、FasL抗体の投与による影響を約2万個の遺伝子解析が可能であるDNAチップを用いて検討した。抗体の投与によって352遺伝子(1.7%)の発現が有意に変動していた(P<0.05)。このうち機能が予測される遺伝子が190個認められた。なかでも、細胞死・増殖因子に関する遺伝子群の変動が4.7%と最も高率であった。 c)発がんに関連する候補遺伝子の1例として、セリン・スレオニンキナーゼpim-3の解析を行うことによって、細胞増殖を促進しアポトーシス(細胞死)を抑制して肝がんの進展に関与していることが示唆された(Int.J.Cancer 114:209,2005)。 これらの結果から、発がん病態の細胞免疫学的特徴が明らかになるとともに、発がん過程に関与する遺伝子のスクリーニングを継続することによって肝発がんの制御に有用な遺伝子が絞り込まれる可能性が示された。
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Research Products
(3 results)