2003 Fiscal Year Annual Research Report
「精神障害者家族」の組織化が専門家およびその集団に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
15653031
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
南山 浩二 静岡大学, 人文学部, 助教授 (60293586)
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Keywords | 精神障害者家族 / セルフヘルプグループ / モデルストーリー / 精神医療 / オーラルヒストリー / ナラティブコミュニティ / ヘゲモニー |
Research Abstract |
精神障害者家族の全国組織が結成された1965年前後に焦点をあてながら、全国組織が結成されるに至った経緯に関わる資料や参考文献を収集し整理を行うとともに、データベース化を行った。1965年の初刊から現在に至る全国組織会報については、ほぼ全号収集し、現在、記事内容のデータベース化に着手し始めている。また、役員組織の変遷、全国組織主催の主要な大会の目次や議事録についてはデータベース化がすでに完了している。そして、結成に至る経緯や当時の社会状況について理解を深めるため、全国組織化の経緯に関わった方々などへのインタビューを実施するとともに、家族会事務局あてに送られてきた当時の家族の手紙についても収集し分析を始めている。あまりにも資料が膨大であること、関係者が既に他界している場合が多く情報収集に困難を極めたこともあり、本年度は、まず、基本資料の収集と整理に重点を置かざるを得なかったが、こうした作業から見えてきたのは下記の通りである。まず、個々のセルフヘルプグループができあがりそれが全国組織結成に至ったというよりは、ライシャワー事件を契機にある特定の行政・医療・家族三者の連携に基づき全国組織が結成されたこと、全国組織化が先行し、その後、まず病院を中心に個々のセルフヘルプグループが成立しはじめたこと、などが理解できた。こうした経緯を背景に、家族会が、医療サイドに対し自立的に影響を持ち始めるのは、1980年代前後との見方が、今のところ結論として考えられる。また、「家族が一番偏見をもっている」「親なきあとの問題」など個々の家族の語りに表出しやすいストーリーは、ナラティブコミュニティとしての家族会における語りが集積し結実したというよりは、上記のような組織化の過程のなかで、まず専門家によって語られモデル化していった可能性があるとも指摘しうる。
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