2003 Fiscal Year Annual Research Report
保育園における乳幼児による暴力の社会的構成に関する文化心理学的研究
Project/Area Number |
15653049
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
鹿嶌 達哉 広島国際大学, 医療福祉学部, 助教授 (00284141)
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Keywords | 暴力 / 社会的構成 / 文化心理学 / 保育園 / 乳幼児 |
Research Abstract |
本年度は暴力の社会的構成に関して以下のような研究を行なった。 1.文献研究:暴力発生の心理的メカニズムのみならず、社会文化的構成過程の理解に寄与する学際分野(社会学、文化人類学、文明論、行動生物学など)における文献研究。その結果、暴力が力(権力)関係やコミュニケーションと部分的に相互代替的関係を有すること、集団維持のための儀式の衰退(ジラール)や個人的責任の増大(エリアス)など社会・文化・歴史的要因と密接に連動していることが示唆された。 2.大学生の暴力に対する認知:幼児の身体接触を伴った集団遊び(保育園で収録)やけんか場面(TV番組)に対する大学生の認知を調べた。予備的な分析から、身体接触を伴う遊びを否定的に評価しやすく、集団による一人の子どもへの同調行動を「いじめ」と認知しやすい傾向、けんかは防止すべき「問題行動」であり、けんかが生じた背景やけんかの発達的意味には目を向けにくい傾向が見られた。 3.大学生が幼児期に体験した暴力:大学生の幼児期に関する自由記述から、身体的暴力よりも、「いじめ」や「無視」などの「関係性攻撃」をつらい体験として想起する傾向が見出された。また、暴力やいじめに対する対応や見方は大人(親や教師)の接し方により異なることが示唆された。 4.保育園における予備的観察:保育園における2歳児クラスと年中組において予備的な参加観察を行なった。また、保育士の日常会話や「気にかかる子ども」に関するインフォーマルな相談から、子どもの暴力には以前に比べて抑制的に関わる反面、全否定はしていないこと、暴力(いざこざ、けんかを含む)を独立してではなく、子どもの全般的な発達状況(家庭での養育環境を含む)や軽度発達障害の疑いとの関連で語られることが見出された。 なお、本研究の実施にあたっては、協力者(子ども、保育士、大学生)に対する倫理的配慮を十分に行なった。
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