2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15655044
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中林 誠一郎 埼玉大学, 理学部, 教授 (70180346)
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Keywords | 強磁場 / 水 / 屈折率 / 表面プラズモン / 水素結合 / 磁気力 / 光物性 / 磁気物性 |
Research Abstract |
強磁場中におかれた液体、特に水は、磁場の上昇と共に、その性質を無視できない程度に変化させる。純水を10T程度の強磁場におくと、磁場強度の増加と共に光学的屈折率が上昇した。10T下では、水の屈折率は無磁場よりも1%増加した。この事実を下敷きにして、(1)フェムト秒レーザーを用いた光カー効果の測定から、強磁場中の液体の構造変化を分光学的に明らかにする事、(2)液体物性の磁場制御から、新しい機策に基づく化学反応の磁場制御を創生する事を目的としている。半透明金薄膜を利用した表面プラズモン共鳴測定は、金薄膜の接する100ナノメートル程度の局所領域の光学的屈折率を極めて精密に測る測定技術である。プラズモンは、金属中の電子の集団運動に関わる素励起で、表面に局在した電子の集団運動の素励起を表面プラズモンと呼ぶ。金薄膜にp偏光の光を入射させると、薄膜表面から光の一部が染みだし近接場光となる。この近接場光の表面接線方向の群速度は、入射角と近接場領域の物質の屈折率によって定まる。この時、近接場光の速度と金薄膜の表面プラスマ振動の群速度が一致するとき、光は表面プラズモンにエネルギーを受け渡す事ができる。このような事情を反映して、反射光強度を入射角の関数として観測し、反射光強度が極小となる共鳴角を実験的に求めると、近接場領域の屈折率を精度良く知る事ができる。金薄膜を高純度の水に接し、表面プラズモン共鳴により、水の屈折率を磁場の関数として精密に測定した。その結果、純水の屈折率は、磁場の上昇と共に増加する事がわかった。また、ヘキサン等の無極性液体では、屈折率の磁場変化は測定されない。さらに、水に塩を加えると、塩濃度の増加に従って屈折率の磁場変化は消滅した。屈折率の変化の原因は、勾配磁場からの磁気力の寄与により、液体の密度が変化する機構も考えられる。このことと、磁気誘起構造転移を分離する目的で、縦ボアの超電導磁石を用いて、添加塩の磁性と濃度を制御し、上下に対称な2つの勾配磁場最大点と磁場中心での共鳴角の変化を比較した。この結果から、磁気力の効果は、事実上無視できる事を明らかにした。このように、水の表面プラズモン共鳴の磁場効果の実験を総合して、水素結合性液体におよぼす未開の磁場効果の存在を確証し得た。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Hosoda, H.Mori, N.Sogoshi, A.Nagasawa, S.Nakabayashi: "Refractive Indices of Water and Aqueous Electrolyte Solutions under High Magnetic Fields"J.Phys.Chem.A. 108. 1461-1464 (2004)
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[Publications] A.Karantonis, M.Paitas, Y.Miyakita, S.Nakabayashi: "From excitatory to inhibitory connections in networks of discrete electrochemical oscillators"J.Phys.Chem.B. 107. 14622-14630 (2003)
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[Publications] E.Mishina, T.Tamura, H.Sakaguchi, S.Nakabayashi: "Kinetics of Adsorption and Self-Assembling of Thiophene and Dodecanethiol Studied by Optical Second Harmonic Generation"Chemistry Letters. 32. 652-653 (2003)
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[Publications] E.Mishina, Q.-K.Yu, T.Tamura, H.Sakaguchi, A.Karantonis, S.Nakabayashi: "Kinetic profile of adsorption and self-assembling of thiophene oligomers studied by optical second harmnic generation"Surface Science. 544. 269-277 (2003)
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[Publications] Q-K.Yu, Y.Miyakita, S.Nakabayashi, R.Baba: "Magnetic Field Effect on Electrochemical Oscillation during Iron Dissolution"Electrochemistry Communications. 5. 321-324 (2003)
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[Publications] M.Nawa, R.Baba, S.Nakbayashi, C.Dushkin: "Ordering Effect of high magnetic Field on Silver Nanoparticle Arrays for Electron Transfer Devices"Nano.Lett. 3. 293-297 (2003)