2003 Fiscal Year Annual Research Report
電子顕微鏡構造生物学のための沃素多核体蛋白質標識試薬の開発と応用
Project/Area Number |
15657025
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
永山 國昭 岡崎国立共同研究機構, 統合バイオサイエンスセンター, 教授 (70011731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田坂 基行 東京大学, 大学院・理学研究科・日本学術振興会, 特別研究員
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Keywords | 沃素多核体 / 位相差電子顕微鏡 / 蛋白質標識 / 蛋白質構造解析 |
Research Abstract |
本研究では、沃素多核体を標識した蛋白質を位相差電子顕微鏡で観察することにより、蛋白質間相互作用解析、複合蛋白質構造解析を行うことを目的としている。 従来の生物電顕用標識試薬は2種類に大別される。1つは云わゆる染色剤で、主に重金属が用いられており、これらは標識が非特異的で、かつ蛋白質変性剤でもあるという弱点があった。もう1つはナノゴールドのように大きさの定まった重金属化合物の標識で、これらは比較的化合物直径が小さく特異的であるが、蛋白質標識として使うには分解能が不充分なことや、pHや温度に関して適用範囲が限定されている、という弱点があった。本研究で狙う沃素多核体試薬は、これらの弱点をカバーすることを目的としており、新しいカテゴリーの電顕用高分解能標識である。 まず、Cs_2B_<12>H_<12>にヒドロキシルアミン-O-スルホン酸を用いてアミノ基を導入しCsB_<12>H_<11>NH_3を得たのち、沃素と一塩化沃素を用いて沃素を導入し、標識沃素多核体であるB_<12>I_<11>NH_3を得た。 この沃素多核体を電子顕微鏡により観察した結果、1個の沃素多核体が直径1.4nmの1個の球として観察された。X線結晶解析による沃素多核体の直径は1.21nmであり、この観察結果は、1個の蛋白質に複数個の沃素多核体をラベルすることにより蛋白質の立体的構造を決定できる可能性を示すものである。 これまでに、マレイミド基が蛋白質表面上の側鎖官能基のうちチオール基(-SH)に選択的に反応することが知られており、本研究ではマレイミド基と沃素多核体をリンカーを介して結合した分子を設計し、合成に着手した。無水マレイン酸と2-アミノエタノールよりN-β-オキシエチルマレアミド酸を得たのち、トルエン溶媒中で加熱し、合成中間体であるN-β-オキシエチルマレイミドを得た。
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