Research Abstract |
(1)これまで,根分泌物質の定量は同位体を利用して行われてきたが,この方法は,時間と施設の制約のため多くの植物間の比較には適さない。今年度は,まず。多くの植物の根分泌量を同時に測定できる方法を確立した。 (2)人工気象室に,ペットボトルを半分に切り取り,上半分にシリカサンドを詰め,植物を栽培することにより,根からの分泌物質を回収する方法を試みた。容器から物質が漏れないように工夫し,ある一定期間植物を栽培した後,サンドから根を分離し,サンドから80%のエタノールを用い,分泌物質を回収した。回収後エバポレーターで濃縮して物質の定量を行った。 (3)植物生育量とともに,分泌物質量も変化するために,生育段階の異なる植物をサンプリングし,植物生育量に対する一次回帰の傾きにより,植物種間の比較を行った。植物生育量として,根乾物重,地上部乾物重,根長を用いたが,根乾物重が最も高い適合度を示した。 (4)用いた植物は,イネ科,マメ科,キク科,アブラナ科の4科に属する作物である。各科最低5作物種を用いた。今年度は根分泌糖を分析した。分析には液体クロマトグラフィーを用い,グルコース,フルクトース,ソルビトール,シュクロース等の各糖の量を測定した。 (5)用いた種間には,根から分泌される糖の全量に大きな差が見られた。作物種間の変異の多くは,科間の差に還元できた。一般に最も分泌糖量が多かったのはマメ科であり,最も少なかったのは,アブラナ科であった。イネ科とキク科は両科の中間にあった。また,分泌糖の組成も種や生育時期で変化していた。
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