2003 Fiscal Year Annual Research Report
小児の注意欠陥多動障害(ADHD)および学習障害に関与する環境および遺伝要因-特に脳神経系発達期における甲状腺ホルモン動態をマーカーとした予防医学的研究-
Project/Area Number |
15659144
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岸 玲子 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80112449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 博美 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (90191832)
室橋 春光 北海道大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (00182147)
佐田 文宏 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (90187154)
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Keywords | 注意欠陥多動障害(ADHD) / 甲状腺ホルモン / TSH / FT4 / マススクリーニング / 妊婦 |
Research Abstract |
本研究では、「注意欠陥多動障害」(ADHD)など小児の神経発達障害、行動異常の発症リスクを解明するために、関与する環境・遺伝要因との関連を検討した。特に、内分泌攪乱化学物質が甲状腺への作用を介して神経発達に影響すると危倶されていることから、甲状腺機能との関連に焦点を当て、検討を行った。札幌市内の4つの小児神経専門医療機関に通院しているADHDを含めた発達障害児を対象とし、同意を得た後、母親の妊娠時、及び児の新生児期の甲状腺機能検査を検索し、同時に現在の甲状腺機能にっいての測定を行った。なお、札幌市では1986年より妊婦及び新生児の甲状腺マススクリーニングを行っている。 本年度は、発達障害児と診断された7歳から17歳の児31名(男29名,女2名)を対象とし、分娩年月日、性、分娩週数(±1週)をマッチさせた200名を対照群として遊離型サイロキシン(FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を解析した。その結果、新生児期のTSHは症例が1.7μU/ml(0-6.3)に対し、対照では、2.7μU/ml(0〜11.2)と症例で低値の傾向が見られた。FT4では、症例が1.9ng/dl(1.2-3.7)に対して、対照は2.1(1.0-4.4)と差が見られなかった。児の現在の甲状腺機能については、症例のみの検討になったが、異常は見られなかった。さらに、症例の母親の妊娠時マススクリーニングの結果について検索し得た8名については、甲状腺機能に異常はなく、抗甲状腺抗体陽性者もいなかった。 一般的には、分娩ストレスにより、出生直後TSHは過剰分泌されるために漸減する。ADHDを含めた発達障害児のTSH低値が、代謝過程の未熟性を反映しているかを判断するためにも、今後さらに症例数を増やして検討していく必要があると思われる。
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