2003 Fiscal Year Annual Research Report
第1次視覚野における両眼視差情報の処理伝達回路の解明
Project/Area Number |
15700258
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 宏喜 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助手 (40335386)
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Keywords | 両眼視差 / ネコ視覚皮質 / 多電記録 / 両眼性受容野 / 視覚情報処理 / 神経回路 |
Research Abstract |
われわれは両目でものをみるとき、片方の目を閉じているときよりも、はっきりとした奥行きのある3次元世界を知覚している。これは、われわれが、ものの左右眼での見えのずれ、すなわち「両眼視差」(以下、視差、と略す)を手がかりとして、ものの立体構造を脳で再構築できるためと考えられている。この両眼立体視の脳機構には、多くの視覚研究者が関心を持ち、これまで、脳の様々な部位で、両眼視差にたいする単一ニューロンの反応が測定されてきた(1)。しかしながら、視差にたいする細胞応答が、どのような神経回路で作り上げられるのかについては、不明な点や議論されている点が多い(2)。この一因として、これまでに、視差情報を伝達するために結合した2つの細胞ペアの応答の活動が、同時に測定されたことがないことがあげられる。本研究では、視差が初めて検出される大脳皮質部位、第一次視覚野(V1)に焦点を当て、機能的に結合した細胞ペアから活動を記録し、それらの視差応答プロファイル(両眼性受容野構造)を詳細に比較することで、視差情報が伝達される神経ネットワークの解明に挑む。 当初、備品として購入予定であったThomas社の多電記録システムは、配付された交付金では購入できず、その代替として、多電電極および、増幅器、コンピューターを個別に購入し、セットアップを現在行っている。このため、目的である多電記録にはいたっていないが、すでに大脳皮質V1野およびV2野の両眼視差感受性細胞からの単一神経細胞外記録はこの1年間十分行った。その過程で、V1野ではなく、V2野に、これまでに報告されていない新規の両眼視差感受性細胞が存在することを発見し、すでに2003年度の日本神経科学学会および、北米神経科学学会で報告をおこなった。今後は、多数細胞からの記録に挑むと同時に、この新たに発見した細胞の性質のより詳細な解析も行う。
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Research Products
(1 results)