2003 Fiscal Year Annual Research Report
素早さと正確さを必要とする運動における動作および筋活動の協調的変動に関する研究
Project/Area Number |
15700397
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 和俊 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (30302813)
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Keywords | 運動制御 / ヒト / 巧みさ / 運動の協調 |
Research Abstract |
今年度は、身体部位間の協調を必要とする動作を遂行する際、動作速度がどのように動作の安定性に影響するのか、非線形力学系アプローチによる時系列解析を用いて検討した。実験においては、両手に持った振子を一定時間間隔で提示されるメトロノーム音に合わせて前後に振動させるという運動課題を用いた。このとき、動作速度を規定するメトロノームの周波数を、0.67,1.00,1.33Hzの3種類設定した。また、両手に持った振子の固有周波数差を-3,0,+3Hzの3種類設定した。したがって運動遂行上条件は、動作の運さ(3)×振り子の固有周波数差(3)で9条件となる。このときの動作を、非線形時系列解析法の1つである相互再帰定量化解析(cross recurrence quantification analysis,相互RQA)を用いて解析した。RQA解析とは、与えられた2つの時系列を高次の相空間に埋め込み、その相空間内での軌跡の近接により軌跡の安定性を定量化する方法である。この方法により、協調動作に含まれるランダムなノイズ成分および軌道の安定性の指標となる最大リアプノフ指数を推定することができる。RQA解析の結果、動作速度が最も速いとき,最大リアプノフ指数の推定値は最も大きく、軌跡が最も不安定であることが示された。しかしながら、軌跡が最も安定していたのは動作速度がもっとも遅いときではなく、左右の振子の固有周波数と動作周波数が一致するときであった。このことは、動作の安定性が単に速度によって決まるのではなく、動作している身体部位や制御対象の固有周波数という物理的特性が動作の安定性に大きく貢献していることを意味している。
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