2003 Fiscal Year Annual Research Report
組織マイクロアレイFISH法による放射線誘発甲状腺がんの国際分子疾学的解析
Project/Area Number |
15710040
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高村 昇 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (30295068)
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Keywords | 甲状腺がん / ret / PTC / FISH法 / チェルノブイリ / セミパラチンスク / 原爆被爆者 |
Research Abstract |
広島・長崎の原爆後障害疾患として、白血病などとともに甲状腺がんのリスクが増加し、さらに1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故以降、小児甲状腺がんが激増した。しかし放射線誘発甲状腺がんの分子機構の詳細は未だ明らかにされていない。チェルノブイリの小児甲状腺がんではret遺伝子の再配列が高頻度にみられるが,組織型との関連性、あるいは予後との関連など、不明な点が多い。現在放射線誘発甲状腺がんに特異的な再配列の候補(ret/PTC3)は想定されているものの、現場の混乱や研究各施設の実験手技の違いから、一定の結論を出すのが困難な状況である。 そこで本申請では、放射線誘発甲状腺がんの組織マイクロアレイFISH(蛍光in situ ハイブリダイゼーション)法による遺伝子解析を、世界の被爆者の甲状腺がんサンプルを用いた民族分子疫学的アプローチとして行い、具体的には、長崎(日本)、チェルノブイリ(ベラルーシ共和国、ウクライナ、ロシア連邦)、セミパラチンクス(カザフスタン共和国、ロシア連邦)で、甲状腺がん病理組織ブロックのサンプリングを行い、ret遺伝子再配列を調査することとした。 初年度はまず、長崎原爆被爆者における甲状腺がんサンプル約50例を用いてまずブロックよりRNAを抽出してRT-PCRを行ってret/PTC1及び3の再配列の有無をスクリーニングする一方、同一の症例を用いてFISH法により再配列を確認した。その結果、RT-PCRでは約50例中1例のみにret/PTC1の再配列が認められ、この症例ではFISH法でも再配列を示す染色体相当部位の接近が認められた。このことは、従来考えられてきた日本人甲状腺がんにおけるret/PTC再配列が低頻度であるということを、FISHレベルでも示したものである。 次年度は、同様の調査をチェルノブイリ、さらにはセミパラチンスクの症例にも拡大し、民族分子疫学的見地から、FISH法を用いた甲状腺がん再配列の頻度を調査していき、放射線誘発甲状腺がんにおけるret/PTC再配列の意義について検証していく。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hamada A, Takamura N等: "No evidence of radiation risk for thyroid gland among schoolchildren around Semipalatinsk Nuclear Testing Site"Endocr J. 50・1. 85-89 (2003)
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[Publications] Meirmanov S, Nakashima M, Kondo H, Matsufuji R, Takamura N等: "Correlation of cytoplasmic beta-catenin and cyclin D1 overexpression during thyroid carcinogenesis around Semipalatinsk nuclear test site"Thyroid. 13・6. 537-545 (2003)
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[Publications] Olkhovich N, Takamura N等: "Novel mutations in Arylsulfatase A gene in three Ukrainian families with metachromatic leukodystrophy."Mol Genet Metab. 80・3. 360-363 (2003)
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[Publications] Takamura N, Hamada A等: "Urinary iodine kinetics after oral loading of potassium iodine"Endocr J. 50・5. 589-594 (2003)
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[Publications] Iwata K, Takamura N等: "Loss of heterozygosity on chromosome 9q22.3 in microdissected basal cell carcinoma around Semipalatinsk nuclear testing site, Kazakhstan."Human Pathol. (印刷中).
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[Publications] Nishiguchi M, Takamura N等: "Comparison of Ximelagatran with Warfarin for the Prevention of Venous Thromboembolism after Total Knee Replacement."N Engl J Med. 350・6. 616-617 (2004)