2003 Fiscal Year Annual Research Report
多環式芳香族炭化水素の発がん機構におけるカルボカチオン中間体の特性―電子構造と反応性に関する物理有機化学的および理論化学的探求
Project/Area Number |
15710160
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡崎 隆男 京都大学, 工学研究科, 助手 (90301241)
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Keywords | 多環式芳香族炭化水素 / 発がん性 / 変異原性 / カルボカチオン / NMR / 理論計算 / 超強酸 / 直接観測 |
Research Abstract |
ベンゾ[a]ピレンに代表される発がん性あるいは変異原性の疑いのある多環式芳香族炭化水素の発がん機構で生じる中間体カルボカチオンに関して、分子構造や反応特性と発がん性や変異原性と関連および置換基の効果を物理有機化学的なアプローチによって定量的に解明した。特に炭化水素の中で、2から5個まで縮合環をもつピレン系、フェナントレン系、アズレン系、ベンゾ[a]ピレン系、フルオレン系等について調べた。 すなわち、発がん性多環式芳香族炭化水素や代謝物およびそのモデル化合物を合成する方法を新たに開発した。そして、合成した種々の炭化水素誘導体から擬似代謝反応である超強酸との反応によって、中間体カルボカチオンを低温でのイオン安定条件下において発生させた。さらに、多次元NMRによって直接観測することによって、反応位置と反応選択性を解析し、シグナルの完全帰属を行った。そして、出発物質とのNMRケミカルシフト差からカルボカチオン陽電荷分布図を作成し、分子構造とDNA等の求核試薬との反応性や選択性の関連を詳細に調べた。また、理論化学的計算を行うことによって電子エネルギーと電子状態を明らかにし、DNA等との求核置換反応のエネルギー相関について検討を加え、反応エネルギーと発がん性や突然変異性との関連を調べた。本研究は、種々の多環式芳香族化合物の発がん性と変異性と中間体カルボカチオンの電子構造との関連について、新理論構築につながると考えられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Okazaki, Takao, Laali, Kenneth K.: "A theoretical(DFT, GIAO-NMR, NICS)study of the carbocations and oxidation dications from azulenes, homoazulene, benzazulenes, benzohomoazulenes, and the isomeric azulenoazulenes"Org.Biomol.Chem.. 1・17. 3078-3093 (2003)
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[Publications] Okazaki, Takao, Laali, Kenneth K.: "Carbocations and Oxidation Dications from Benzo[a]pyrene and Its Nonalternant Isomers Azulenophenalenes ; A Theoretical(DFT, GIAO, NICS)Study"J.Org.Chem.. 69・2. 510-516 (2004)