2004 Fiscal Year Annual Research Report
ルーマニア語におけるクリティック・ダブリング構文の統語的研究
Project/Area Number |
15720080
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 健 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50292074)
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Keywords | ルーマニア語 / ロマンス語 / クリティック / 統語論 |
Research Abstract |
本研究は、ルーマニア語において特徴的な統語現象である目的語クリティックの重複、いわゆるクリティック・ダブリング現象を包括的に記述し、この現象に対して明瞭で妥当性の高い分析を提示することを目指す。昨年度は直接目的語の前置詞"pe"による標示とクリティック・ダブリング現象の関係を分析したが、本年度は昨年度の成果をもとに直接目的語を前置する構文と当該構文との関係を分析対象として設定した。当該構文においては、前置された直接目的語が前置詞"pe"を伴う場合、前置詞を伴わない場合のいずれにおいてもクリティック・ダブリングが義務的である点に着目し、その理由を明らかにすることで当該構文の統語的特性をより明確に提示することが可能となった。その研究成果は、次ページに示す研究論文として公表した。 本研究ではまず、ルーマニア語における直接目的語前置構文は、他言語において観察される左方転位構文ではなく話題化構文として分析されるべきであることを示した。話題化構文は一般的に演算子移動を伴うと分析され、英語においては目的語が直接文頭の位置に移動すると分析される。しかし、ルーマニア語においては通常の語順の場合と話題化構文においてクリティック・ダブリングに関するふるまいが異なることから、話題化される直接目的語が文頭に移動するとは考えにくい。従って、話題化される直接目的語はもともと文頭の周辺的な位置に生起する要素であると分析した。前置詞"pe"が直接目的語と共起する場合には、この前置詞は話題化される要素を提示する機能をもつと考えられる。この機能は、前置詞が生起しない場合でも存在すると考えなければ整合性に欠けることになる。そこで、本研究では顕在的な前置詞が生起しない場合でも"pe"に対応する空の前置詞が話題化される直接目的語を支配すると提案した。これによって、ルーマニア語の話題化構文を包括的かつ簡潔に特徴付けることが可能となった。
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Research Products
(1 results)