2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730016
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大脇 成昭 熊本大学, 法学部, 助教授 (30336200)
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Keywords | 誘導的手法 / 補助金 / 租税優遇措置 / 予算制度 / 財政赤字 |
Research Abstract |
本年度は、1年目の作業として基礎資料の収集につとめた。国と地方公共団体の財政を取り巻く状況が引き続き悪化し、それに伴い、いわゆる「三位一体改革」を国が推進するなかで状況が急変してきたため、文献研究と並行して、最新の素材を地方公共団体の現場に求めた。 調査対象に選んだのは、使途を限定しない形で県から市町村に交付される補助金である。地方分権改革においても国等からの補助金を可能な限り削減し、税源を移譲する方向が示されている。しかしながら税源そのものが乏しい基礎自治体においてはなお、補助金が重要な財源となる。そこで限られた財政資源をいかにして有効に各地方公共団体の政策実現に使い、更にはこの制度を活かして広く政策の策定能力の向上を目指すことが図られる。 このような動きは財政作用が各分野での政策を誘導するものと評価することができよう。まさに本研究が対象とする現代的変容の発現形態である。 具体的には、この種の試みとして注目されている千葉県の「分権新時代・市町村総合補助金」と岩手県の「市町村総合補助金」を選定し、この制度の企画・立案段階の経緯、根拠規定、運用状況、今後の展望などについて担当者に面会し、聞き取り調査を行った。 現時点では両県ともに従来からの公共事業型補助金等に代替するものとして、制度運用を行っている。しかしながら中期的(3年程度)には県の役割の変化も見据えて見直しが予定されており、より一層政策展開を各自治体が独自に行えるような誘因となる可能性を持っている。それだけに今後の推移が注目されると考えられる。 本年度の作業を通じで、財政手法によって政策の「幅」を増幅させる実例が得られた。今後はこのような手法の持つ法的特性や、現行法下での限界論について理論の深化を図り、業績の公表につなげてゆきたい。
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