2004 Fiscal Year Annual Research Report
情報通信産業の競争・規制の理論・実証研究:ユニバーサル・サービス政策を中心に
Project/Area Number |
15730133
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
依田 高典 京都大学, 経済学研究科, 助教授 (60278794)
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Keywords | ブロードバンド / 第三世代携帯電話 / IP電話 / 離散的選択モデル / コンジョイント分析 / ロジット・モデル |
Research Abstract |
研究実施計画に基づき、情報通信産業のユニバーサル・サービスを第三世代携帯電話ならびにIP電話の2つのサービスについて実証分析しました。 第一に、第三世代携帯電話(3G)の実証研究であるが、次のようなことが判った。離散選択モデルを用いて、携帯電話、PHSなど移動体通信サービスの加入需要分析を行った。特に、本論文の主要な興味は、新興サービスである3Gと成熟サービスである2Gの間でどのような代替性が働いているかを分析することである。料金に関しては、3Gと2Gの間で明確な相違が見てとれた。3Gは弾力的であるが、2Gは非弾力的である。これは、3Gサービスが今なお普及の途上にあり、料金の変化に対して感応的である一方で、2Gサービスは十分に成熟し、料金の変化に対して非感応的であることを表している。機能面で見ると、ウェブ閲覧や動画送受信の利用が3Gの選択確率に大きな影響を与えているという証拠は発見できなかった。これらの発見は、3Gのポテンシャルを活かした利用がまだ十分ではないことの証左かもしれない。しかし、携帯電話サービスは日進月歩であり、3G本格的普及の元年である2004年の分析結果が、このまま2005年以降に当てはまるとは考えにくい。経時的な追跡調査が必要であろう。 第二に、IP電話の実証研究であるが、次のようなことが判った。(1)我々は現在のIP電話はインターネット接続サービスの付属機能であり、固定電話の代替財とまでは考えられていないという仮説を検証した。確かに、我々の計量分析の結果、IP電話との併用も含めて、固定電話を支持する選択者が80%強存在し、現時点では即時に固定電話を解約し、IP電話に移行するような事実は認められない。(2)我々は条件さえ整えば固定電話からIP電話への移行が広がるのではないかという仮説を検証した。その結果、固定電話との併用も含めて、IP電話を利用するという選択者が50%を超え、その際IP電話が普及するかどうかのポイントはIP電話の品質・機能が固定電話並みに保証されるかどうかであることが判った。具体的にはOAB-JタイプのIP電話が廉価に提供されるようになれば、固定・電話からIP電話への移行は一気に広がるように思われる。
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