2003 Fiscal Year Annual Research Report
公共財実験のグループ間競争からみる特殊利益の効果の検証
Project/Area Number |
15730145
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
飯田 善郎 京都産業大学, 経済学部, 助教授 (50273727)
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Keywords | 経済学実験 / 公共財 / 特殊利益 / グループ間競争 |
Research Abstract |
本研究の目的はオルソンの特殊利益論を足がかりに、圧力団体の政治への働きかけを複数のグループが特殊利益というグループ内で公共財として機能する資源を奪い合う状況として捉え、そこでの行動を分析することである。グループ間で特殊利益を奪い合う状況があるとき、グループ内の協力の失敗は、他グループに対する敗北、つまりそのグループに割り当てられる公共財の量の減少という形で各主体の利得に影響を与える。このため、グループ間の競争は協力の程度を高める要因となりえる。本研究ではこのようなシステムの効果を理論と実験研究を並行して明らかにしようとしている。 本年度は7月に2回、上記の状況を単純化したモデルでの経済学被験者実験を行った。2人ずつが1グループとなり2グループが一組になって、各グループが公共財の自発的供給ゲームを行い、同一組内で協力を選択するプレイヤーの数がより大きかったグループがあらかじめ定められた移転所得を受け取るというもので、実験においては移転所得の額をコントロールして被験者の意思決定を調査した。その結果移転所得を理論的に協力が支配戦略となる額以下に設定しても、非常に高い水準の協力が維持されることが確認された。 また、9月には自発的投資が自己の利得関数において純粋なマイナスにしかならない設定の実験を行った。その結果被験者が利己的動機に限らず、自らの行動をもって他者の行動に影響を与えようという戦略的な意思決定を行っていることが確認できた。 公共財実験において非合理的な戦略をとる被験者の活動は珍しくないが、それが維持されることはまれである。これまでグループ内のコミュニケーションの許可やグループ内での罰の制度の導入が協力の維持に効果的であることが指摘されてきたが、単純な競争のメカニズムにもその効果があることが確認された。ただし、それがグループ人数の増加など協力の維持に不利な条件下でも頑強さを維持できるかについての研究は今後の課題である。
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