2004 Fiscal Year Annual Research Report
「不登校の親の会」の人々が持つ「医療」「学校」イメージと「親規範」に関する研究
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15730250
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
工藤 宏司 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (20295736)
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Keywords | 不登校 / 親役割 |
Research Abstract |
今年度の研究は、以下の2つの側面から行われた。それは(1)社会学におけるこれまでの「逸脱の医療化」研究のレビュー(2)当事者や親の会のメンバーによる手記や語りの収集である。(1)については、1980年代に提唱されて以来、着実に成果を挙げてきている「逸脱の医療化論」に関するアメリカや日本における議論を収集し、とりわけ、「不登校」の社会学的研究における応用のされ方および方法論としてのポテンシャルについて考察を進めた。その中では、「不登校」「ひきこもり」においては、「医療化」に関する人びとの実感が、相反する2つの形をとっていることが明らかにされた。具体的には、「医療」との距離の取り方が、これまでの「医療化論」が想定していたような一方向的かつ一面的なものでなく、時に自らたぐり寄せ、時に遠ざけるという、一見相反するような形態である。その点を念頭に(2)では、わが国における「反・医療化」言説の中心的な担い手となった東京シューレや、シューレのメンバーが中心となり発行している不登校新聞など、広く流布している言説を収集し、その中で「医療」および「不登校」という主要な2つのカテゴリーのイメージが、彼らの実践的推論に支えられながら、具体的な語りの中で再起的に構成されているものであることを確認した。来年度は、これらの研究を、具体的なフィールドの成果の分析を交えながら進めていき、最終的には、「医療」イメージが彼らにもたらす相反するように見える感覚を明らかにしたうえで,それが「当事者」や「当事者の親」など、この問題における主要な人びとへの具体的な援助を社会学的に考察する道筋をつける努力をしていきたい。
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