2003 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体やその関連物質における静的および動的輸送現象の理論的研究
Project/Area Number |
15740198
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
紺谷 浩 埼玉大学, 理学部, 助教授 (90272533)
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Keywords | 輸送現象 / バーテックス補正 / 量子臨界現象 / 高温超伝導体 / 重い電子系 / 有機物超伝導体 / 反強磁性揺らぎの理論 / d波超伝導 |
Research Abstract |
1.重い電子系CeCoIn_5における磁場中輸送現象の異常: この系はT_c=2Kの超伝導体であるが、T_c以上の正常相で反強磁性揺らぎが極めて強く、量子臨界点近傍近傍に属する物質である。この系のホール係数R_Hおよび磁気抵抗Δρ/ρの温度依存性および磁場依存性が、標準的なフェルミ液体的振舞いから大きく外れた「非フェルミ液体的挙動」を示すことが明らかになった。紺谷によるバーテックス補正を考慮した理論によると、r≡Δρ・ρ/R_H^2、において分母と分子の非フェルミ液体的振舞いがキャンセルする結果、rが温度および磁場変化を示さないことが予言される。物性研の松田クループと協力して解析した結果、rの上記の性質が良く確認され、CeCoIn_5における輸送現象の非フェルミ液体的挙動は、バーテックス補正の効果として矛盾なく説明できることがわかった。今後、CeCoIn_5の具体的なフェルミ面を考慮した理論計算を実行し、各種輸送係数に見られる異常な振る舞いを統一的に再現することを目標とする。 2.圧力誘起有機物超伝導体β'-(BEDT-TTF)_2ICl_2の理論: この系は常圧では反強磁性絶縁体だが、8GPaの圧力下でT_c=14.2Kの超伝導を示し、有機物超伝導体としでは最高のT_cを与える。超伝導の起源の理論的解明を目指し、我々は圧力下における構造変化に伴いフェルミ面が変形する効果を考慮して、反強磁性揺らぎの理論に基づき多体電子状態を解析した。その結果、この系で反強磁性揺らぎに起因するd波超伝導が実現しているという結論を得た。その後、宮崎たちによる圧力下における第一原理計算の結果に基づき、より詳細な理論解析を行い、実験結果を定性的に再現する温度・圧力相図を得た。今後、この系で観測される電気抵抗の非フェルミ液体的挙動(ρ∝T^n ; n~1.5)を、バーテックス補正を考慮した理論計算を実行して、実験事実の詳細な理解を目指す計画である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Y.Nakajima, K.Izawa, Y.Matsuda, S.Uji, T.Terashima, H.Shishido, R.Settai, Y.Onuki, H.Kontani: "Normal-state Hall Angle and Magnetoresistance in quasi-2D Heavy Fermion CeCoIn_5 near a Quantum Critical Point"J.Phys.Soc.Jpn.. 73. (2004)
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[Publications] H.Kontani: "Origin of superconductivity in beta'-(BEDT-TTF)_2ICl_2 under high pressure and in beta-(BEDT-TTF)_2X at atmospheric pressure"Phys.Rev.B. 67. 180503R-1-180503R-4 (2003)
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[Publications] H.Kino, H.Kontani, T.Miyazaki: "Phase Diagram of beta'-(BEDT-TTF)_2ICl_2 under High Pressure Based on the First-Principles Electronic Structure"J.Phys.Soc.Jpn.. 73. (2004)