2004 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体やその関連物質における静的及び動的輸送現象の理論的研究
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15740198
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
紺谷 浩 名古屋大学, 理学研究科, 助教授 (90272533)
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Keywords | 輸送現象 / バーテックス補正 / 量子臨界現象 / 高温超伝導 / 重い電子系 / 軌道縮退 / 門脇・Woods規則 / 磁場誘起SDW |
Research Abstract |
1.軌道縮退を有する重い電子系における拡張された門脇-Woods規則: 重い電子系化合物では、f電子の軌道縮退が存在する物質が多数存在し、例えば多くのYb系重い電子系では基底状態が8重縮退(J=7/2)している。これらの系では、従来重い電子系の普遍的性質と看做されてきた門脇-Woods規則(ρ=AT^2,C=γTとおくと、A/γ^2=1x10^<-5>μΩcm(mol K/mJ)^2)が極端に破れることが近年明らかになり、その原因が問題になっていた。本研究では軌道縮退の効果に着目し、軌道縮退を有する周期的アンダーソン模型における強結合極限の電子状態を動的平均場理論に基づき解析的に研究し、「N重縮退の場合へと拡張された門脇-Woods規則A/γ^2=1x10^<-5>・2(N(N-1))^<-1>μΩcm(mol K/mJ)^2」を導出した。この理論式に基づき実験データを解析した結果、従来の門脇-Woods規則に従わず問題となっていた化合物も含め、殆どの重い電子系の門脇-Woods比が「統一的に」理解できることが明らかになった。近年重い電子系の新物質開発が盛んであり、特に軌道縮退を有する化合物の物性に注目が集まっていることから、本研究の成果は今後ますます重要になると思われる。 2.2次元電子系における磁場誘起SDWの理論:重い電子系CeRhIn_5や反強磁性近傍の2次元有機導体では、外部磁場により反強磁性(SDW)秩序が発生することが知られているが、これは単純な平均場的描像では理解できない揺らぎが本質的な現象であり、大変興味深い。我々は反強磁性臨界点近傍における磁場効果(ゼーマン項由来)をFLEX近似に基づき解析した。その結果、「外部磁場の効果によりスピンの熱的および量子的揺らぎが抑制されて古典的になる結果SDW秩序が誘起される」というメカニズムを解明し、上記の実験事実の説明に成功した。 3.ポイントノード的異方的s波超伝導の理論:ボロンカーバイドはT_c=15Kの超伝導体であり、最近の実験によりポイントノード的な異方性を有するs波超伝導という、これまでに類を見ない超伝導状態が実現していることが明らかにされた。その説明としてs波的引力とg波的引力が偶然等しいとする理論がMakiたちにより提唱されたが、説得力に乏しい。本研究ではこの系で強い電子・格子結合とネスティングに由来する反強磁性揺らぎが共存していることに着目し、実効モデルを強結合エリアシュベルグ方程式に基づき解析した。その結果、ポイントノード的s波超伝導状態がごく自然に再現されることが明らかになった。
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Research Products
(4 results)