2003 Fiscal Year Annual Research Report
走化性を応用した内分泌攪乱化学物質検出システムの開発
Project/Area Number |
15750131
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
荷方 稔之 宇都宮大学, 工学部, 助手 (30272222)
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Keywords | 走化性 / 内分泌攪乱化学物質 / 環境ホルモン / ビスフェノールA / 細菌 |
Research Abstract |
本研究は、運動性細菌の有する走化性に基づく化学物質認識能力を応用した内分泌攪乱化学物質(以下環境ホルモンと呼ぶ)検出システムの構築を目指している。平成15年度には環境ホルモンに走化性を示す細菌を分離することを目的として研究を行った。 スクリーニングの前段階として、ビスフェノールA(BPA)、p-ニトロトルエン(PNT)、p-tert-ブチルフェノール(PBT)の3種類の環境ホルモンを唯一の炭素源として用い活性汚泥を馴養した。これらの汚泥から各環境ホルモンの資化性細菌を分離し、個々の分離細菌について環境ホルモンに対する走化性を測定したところ、BPAに対して3株、PNTおよびPBTに対してそれぞれ1株の走化性細菌を分離することに成功した。そこで本年度はPNTに対して走性を示す分離細菌のうち、PNT1株について詳細な解析を行った。 PNT1株はグラム陰性の桿菌であり、16SrRNA遺伝子の塩基配列に基づく系統学的解析により、本菌はγ-proteobacteriaに分類されるStenotrophomonas maltophiliaと99.6%の相同率を示した。またPNT1株はPNTだけでなく、BPAやPBTのいずれにも走性を示すことが明らかとなった。このようにPNT1株が3種類の環境ホルモンに対して走性を示すということは、本菌がこれらの環境ホルモンをセンシングし得る走化性センサーを有していることを意味しており、今後さらに分子レベルでの詳細な解析を行うことにより本細菌そのものを動的センサーとして、あるいは走化性センサーの部分を固定化センサーとして応用しうる可能性が示唆される。なお以上の成果については2件の学会発表((1)荷方ら,日本環境学会年会,2004,札幌コンベンションセンター、(2)荷方ら,日本農芸化学会年会,2004,広島大学)を行なった。
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