Research Abstract |
近年,MIMOシステムの実用化研究が進み,いくつかの市販のシステムも見られるようになってきている.特に無線LANにおいては,アクセスポイント側に関しては,ある程度のサイズが許容できるため,アレーの設計の自由度が高い.しかしながら,端末(PC)側では,アレーの設置面積が極めて限られる.その様な場合において,如何にMIMOの特徴を引き出すかが,重要な課題である.本研究の目的である,高精度MIMO伝搬チャネル推定を遂行するにあたり,チャネル推定以前に,まず,いかにMIMOの大容量性を小形なシステムで実現するかと言う問題点を解決し,それらの結果を受けて実験システムの最適化を行った. 1.アレーの素子間相互結合の推定手法 半波長ダイポールのようなシングルモード素子からなるアレーアンテナの素子間相互結合を観測量(端子電圧・電流)のみでいかに正しく推定するかと言う問題に取り組み,自己・相互インピーダンスに新たな定義(解釈)を導入することにより,推定可能であることを明らかにした.これにより従来法に比べ高い精度で、実システムの素子間相互結合の導出が可能となった.本手法はディジタルビームフォーマ全般に適用可能である. 2.MIMOアレーの最適化・実験システムの改良 上述の成果を用いて,MIMOアレーの最適化に関する研究を実施した.解析結果より,従来は素子間相互結合の影響を避けるため,半波長,あるいはそれ以上の間隔でアレーを設置することが望ましいとされていたMIMOにおけるアレーアンテナを,0.2波長程度の間隔で設置し,各素子を入力インピーダンスの複素共役整合することにより,従来のシステムに対して20%の容量増加が期待できることを明らかにした.主に受信SNRの改善が,この容量の増加に寄与しており,これはすなわち,チャネル推定の精度向上にも寄与することをシミュレーションにより,明らかにしている.また,これらの成果をうけ,実験システムのアレーを最適化した.
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