2003 Fiscal Year Annual Research Report
条件的アポミクシスをする3倍体ニガナ複合体の種内分化と多様化機構の解析
Project/Area Number |
15770054
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
喜多 陽子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60345262)
|
Keywords | ニガナ / 渓流沿い植物 / 無融合種子形成 |
Research Abstract |
狭義のニガナsubsp.dentataは日本列島に広く分布し、二次的に開発された林縁や空き地に大規模な集団を作る。3倍体植物で構成され、無融合種子形成と栄養繁殖を行っている。一方で、他の3亜種はそれぞれ東北地方の高山帯、日本海側の海岸縁そして紀伊半島の渓流沿いの岩地に局所的に出現する。これらの集団には3倍体もあるが2倍体が主体に構成されており、有性生殖を通して環境に適応進化してきたと考えられている。前者の3倍体ニガナはアポミクト集団であるにもかかわらず比較的大きな形態的変異を集団内外で持っている。現在みられるように多様な環境に広く分布を広げているのは2倍体有性生殖種の遺伝的多様性を取り込むことにより環境適応をしていると思われる。本研究期間では、無融合種子形成を主に行っている3倍体ニガナがはたして部分的有性生殖を行うか、行っているならばどのような機構であるかを、大胞子母細胞から胚嚢形成過程の解剖形態学的観察、2倍体有性生殖株との交配により出来た種子の倍数性の検証、その実生の血縁関係を共優性マーカーのSSRマーカーによる遺伝的解析をすることにより明らかにする。 今年度は2倍体亜種のドロニガナとイソニガナの採取調査を5、6月に行った。今回の調査から典型的なドロニガナの形態を持つ個体は渓流沿いの岩上や岩壁にのみ生育し、すべて2倍体であることが明らかとなった。その2倍体集団の周辺の岩場以外の場所には3倍体でドロニガナによく似るがやや大型の個体が生育していた。3倍体個体は他亜種(3倍体)とドロニガナ(2倍体)の交雑により生まれたのではないかと推測している。イソニガナは今回調査した1集団には2倍体と3倍体個体が混生していた。倍数性による形態的な違いはなく、3倍体個体は他から侵入したものでなく同集団の2倍体個体と血縁関係があるように見える。一方、核のITS遺伝子ではニガナの亜種間にほとんど塩基置換はなくニガナの亜種間は非常に近縁であることが確認されたが、亜種間の交雑の解析には使えなかった。ドロニガナとイソニガナの2倍体と3倍体の遺伝的関係について解析するためのSSRマーカーを作成中である。
|