2003 Fiscal Year Annual Research Report
チロシンリン酸化シグナルを介する微小管構築制御機構の解析
Project/Area Number |
15770134
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
矢野 元 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子生物学部門, 研究員 (00284414)
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Keywords | 細胞運動 / Collective migration / N-Cadherin / paxillin / Fak |
Research Abstract |
本研究の申請時においてわたくしどもは、Fakおよびpaxillinノックダウン細胞において特異的な微小管構築制御の異常、およびこの制御異常がFakチロシン861のリン酸化の欠如に依存しうることを見い出していた。本年度は計画に基づき、リン酸化Fakチロシン861結合性因子の検索を行った。その結果、検索プローブへの結合が予想された既知因子の結合が検出されスクリーニング系の機能性は確認されたものの、微小管構築制御との関連が示唆されうる新規の結合因子の発見には至らなかった。この結果は、想定したような蛋白質結合による情報伝達様式とは異なる制御が行われている可能性があることを示しており、従来の方法とは異なる解析が必要であると考えられた。そこでその一環として、Fakおよびpaxillinノックダウン細胞の振る舞いについて、同じくインテグリン裏打ち蛋白質であり、かつ同じくチロシンリン酸化による機能制御をうけるp130CasおよびPyk2比較において種々の検討を行った。その結果、微小管構築制御異常と呼応し、Fakおよびpaxillinノックダウン細胞において特異的に、細胞運動性の亢進が観察された。さらにこのことの生理学的な意義を追求し、集団的細胞運動(collective cell migration)の維持においてFakおよびpaxillinが機能しうることをつきとめた。すなわち、集団的細胞運動の維持は、細胞-細胞間のカドヘリン接着の形成・リモデリングにより行われているが、Fakおよびpaxillinノックダウン細胞においては、すくなくともN-カドヘリンを介する細胞-細胞間の接着の形成、維持能が有意に低下していた。この成績を平成15年末の米国細胞生物学会年会において報告した。本学会において、ヴァージニア大学のDr.J.T.Parsonsのグループから、Fakノックダウン細胞における微小管構築制御異常に関して、わたくしどもの知見と非常によく共通し支持する報告がなされており、われわれの観察の正しさに自信を深めた。現在この内容を論文発表すべく、投稿、校正中である。
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