2003 Fiscal Year Annual Research Report
中国雲南省カルスト生態系における"石漠化"に伴う植生退行現象の解析
Project/Area Number |
15780109
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
西尾 孝佳 宇都宮大学, 野生植物科学研究センター, 助手 (60302444)
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Keywords | 石漠化 / カルスト生態系 / 植生退行 / 中国雲南省 |
Research Abstract |
中国雲南省の文山壮族苗族自治州西畴県において,石漠化による植生退行現象を解明するために植生調査区を設定した。調査区は地質の相違、生能系劣化程度に応じて,石灰岩地およびご近接した非石灰岩地にそれぞれ高木林区,低木林区,草原区をそれぞれ3〜5カ所に設定した。石灰岩地高木林区は,Elaeocarpus属,Lithocarpus属の高木が林冠に優占することが多かった。林冠構成種は大きいものでも胸高直径で10cm程度,樹高で20m程度であった。低木層以下は種多様性が極めて高く,地表の露岩およびその亀裂部,土壌堆積部の配置に応じて植物が生育していた。石灰岩地低木林区は,Cyclobalanopsis属,Platycarya属の木本からなる二次林で,低木層にはItea属,Diospyros属,Boehmeria属の植物が優占していた。草本層は,高木林区に比べて種組成が単純であった。石灰岩地草原区は,イネ科のCapillipedium parviflorum, Eremopogon delavayi, Themeda triandra var. japonicaが優占し,低木種,木本種とも出現頻度は低かった。非石灰岩地高木林区はLihtocrpus属,Castanopsis属およびFagus属などブナ科の木本が高木層に優占することが多く,胸高直径50〜80cmの個体が散在していた。低木層以下は石灰岩地に比べて単純で,区内では露岩が少なく,土壌がよく堆積していた。非石灰岩地低木林区はSchima属の木本からなる疎林で,Calicarpa属低木などが広く分布した。また,近隣に植栽されているコウヨウザンが実生として侵入していることも特徴的であった。非石灰岩地では遷移の進行が速いためか草原として停滞しているところは確認できなかったため,本年度の調査は見送った。現在,現地の研究協力者が調査対象地を探索している。
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