2004 Fiscal Year Annual Research Report
東・東南アジアにおける農民の政治行動と農業政策決定メカニズムへの影響
Project/Area Number |
15780148
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石田 章 島根大学, 生物資源科学部, 助教授 (50346376)
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Keywords | 民営化 / 農産物流通 / 族議員 |
Research Abstract |
WTO体制下にあって,多くのアジア途上国では市場への政府介入が後退し,農業部門においても財政支出の削減,規制緩和,民営化,貿易自由化などの諸施策が推進されている。 当然のことながら,このような市場原理を重視した農業政策への方針転換が,農業生産,農産物加工,そして農産物流通に係わる各アクターに多大な影響を及ぼしていると容易に推察される。そこで本研究では,アジア諸国の中でもとくにドラスティックに米流通の制度改革を推進中のマレーシアを具体的事例として取り上げ,精米・米流通に関係する各アクター(政府・政権与党,農業族議員,食糧庁<民営化後はBERNAS社>,精米・米流通会社)にとって,食糧庁民営化が如何なる意味を持っていたのかを政治経済学的に分析した。 得られた結論を要約すると,次のとおりである。1.BERNAS社と政府・政権与党との関係を検討した結果,政府・政権与党によるダミー会社における株式保有,経営陣人事を通じたBERNAS社の経営実権掌握の実態が明らかになった。すなわち,規制緩和・自由化の世界的潮流のなかで農業(農民)保護の目的で,形式的民営化と実質的な国家管理が同時に行われている。2.食糧庁民営化に伴って発行された株式が族議員のダミー会社に配分されたことから,族議員は巨額の株式売却益を得たと推察される。3.BERNAS社は,精米・米流通を中心とした事業拡大によって慢性的な赤字経営体質から脱却し,アジア経済危機の期間中も含めて経常黒字を維持している。4.精米・米流通会社は,BERNAS社に買収されることによって株式売却益を得ると同時に,米流通ビジネスでの利益を確保し続けることが可能となった。 これら4点を総合的に判断すると,食糧庁の民営化は(消費者を除くと)敗者なき改革であったといえよう。
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Research Products
(1 results)