2003 Fiscal Year Annual Research Report
寄生性原虫赤痢アメーバにおける貪食と病原性に関する研究
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15790219
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
中野 由美子 (斉藤 由美子) 国立感染症研究所, 寄生動物部, 研究員 (30321764)
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Keywords | 赤痢アメーバ / Rab / 低分子量GTP結合タンパク質 / ファゴサイトーシス / 肝膿瘍 / エンドサイトーシス |
Research Abstract |
赤痢アメーバはヒト腸管内で活発に細菌や赤血球を貪食しながら栄養分を摂取している。この貪食活性(ファゴサイトーシス)とアメーバの細胞上皮への侵入性や肝膿瘍形成といった病原性は相関があると従来から報告されていたが、分子メカニズムは明らかでなかった。平成15年度の研究では、低分子量GTPaseのEhRab5がファゴサイトーシスの効率だけでなく肝膿瘍形成能にも影響を関与することを示した。EhRab5は赤血球を取り込む初期過程(5-10分)に大きな空胞上に局在することが観察されている。EhRab5の活性化型と不活性化型変異型を発現する形質転換アメーバ株を作成し、それらにおけるファゴサイトーシスと病原性における効果を調べた。その結果、野生型EhRab5を発現する株は赤血球の貪食速度が上昇したのに対し、変異型を発現する株はどちらも取り込み抑制が観察された。間接蛍光抗体法により、変異型EhRab5発現株では、ファゴサイトーシス初期の空胞形成が阻害されていた。他種生物ではRab5はファゴサイトーシスだけでなくエンドサイトーシスにも関与することが報告されているが、EhRab5変異発現株ではエンドサイトーシスには影響が見られず、ファゴサイトーシス特異的に機能していることが示された。よって、EhRab5が局在する空胞形成がファゴサイトーシスと関連があることが示された。さらに、ハムスターの肝膿瘍形成モデルに形質転換アメーバを用いたところ、EhRab5大量発現株ではコントロール群よりも大きな肝膿瘍を形成した。このことは、ファゴサイトーシスの活性上昇が病原性と相関するというこれまでの報告を支持すると共に、それに関与する遺伝子を初めて同定したものである。しかしながら、貪食が低下するEhRab5活性化型変異形質転換株を肝膿瘍形成モデルに用いると、野生型の大量発現とコントロール群との中間の大きさの膿瘍を形成した。よってEhRab5の活性化状態に関係なく、EhRab5タンパク質の大量発現が肝膿瘍形成に影響を示すことを示唆していた。
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