2003 Fiscal Year Annual Research Report
周産期の脳傷害がもたらす中枢神経発達障害の解明と治療
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15790769
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
野村 貞宏 山口大学, 医学部, 助手 (20343296)
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Keywords | 水頭症 / マウス / 周産期 / 白質形成不全 |
Research Abstract |
周産期の脳障害がもたらす代表的な脳形態は、脳室の拡大である。当初の実験はピグレットを使用して行う予定であったが、不成功に終わったため、入手した新しい先天性脳室拡大マウスを使用した。マウスの生後4適および6週での脳冠状断、矢状断の標本を作成し、その形態学的特徴を観察した。側脳室と第3脳室の拡大が著明で、第4脳室の拡大は軽度だった。それらの程度は4週よりも6週で進行していた。その形態から、中脳水道の狭窄または閉塞による水頭症と考えられるが、現在まで中脳水道の閉塞は確認できていない。むしろ脳実質の変化(脳室周囲での基底核神経細胞と神経線維の喪失が特徴的で、脈締叢の萎縮も認められた)からは交通性水頭症または脳形成不全と思われる。 先天性の脳室拡大をみるとき、それが髄液の循環障害に基づくものか、脳の形成不全によるものか、あるいはその両者かを判定することは重要であるが、しばしば困難である。その理由は、いずれかの病態が先行しても二次的に他方の病態を併発することが多いためである。現在このマウスの脳室にインクを投与し、そのインクが頭蓋内クモ膜下腔や頭蓋外リンパ節に導かれる速度を測定している。これまで得られている範囲の結果からは、大脳、特に白質の形成不全が脳室拡大の主たる原因と推測される。中枢神経の発達過程のうち、白質神経線維のミエリネーションが行われるのは周産期であることから、このモデルが当初行う予定の周産期脳傷害による中枢神経発達障害の実験に有用であると期待する。
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