2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の粘弾性特性を考慮に入れた蝸牛内振動増幅メカニズムの解明
Project/Area Number |
15790927
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
菅原 路子 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 助手 (30323041)
|
Keywords | 粘弾性特性 / コルチ器 / 数値解析 |
Research Abstract |
内耳蝸牛内のコルチ器は,音の機械振動を電気信号に変換し,聴神経を介して脳へと伝える働きを有する.その際,コルチ器内に存在する聴覚の感覚細胞である外有毛細胞は,機械信号を増幅すると考えられおり,このような増幅振動メカニズムが聴覚の鋭敏性の源である可能性が高い.これまで,実験・数値解析の両面からメカニズム解明が試みられており,近年は特に,数値解析による解明が主として行われてきた.これまで構築されてきたコルチ器の数値解析モデルの特徴は,蝸牛内各部位の機械的特性を弾性と仮定しているところにある.しかし一方で,コルチ器を構成する外有毛細胞は,粘弾性特性を有することが報告されている.従って,より現実に近い数値解析を行うためには,コルチ器のモデル化にあたり,コルチ器各部位の粘弾性特性を考慮に入れる必要がある. そこで本研究では,まず初めにマイクロメートルオーダでの粘弾性特性を計測することが可能な装置を構築し,コルチ器を構成する各要素の粘弾性特性を評価することを試みる.そして,その結果を基にコルチ器の粘弾性モデルを構築し,数値解析により蝸牛の振動増幅メカニズム解明を試みる.本年度得られた結果は以下の通りである. 1.本年度本申請により購入したピエゾリニアステージおよびそのコントローラ,超高精度レーザ変位計および既存の小型振動発生機を組み合わせ,マイクロメートルオーダーでの評価が可能な機械特性計測装置を構築した. 2.既知の粘弾性特性を有するシリコン材料に対し,上記1のシステムを用い,機械特性の計測を行った.その際,粘弾性パラメータを得るための数値モデルを構築し,得られたパラメータとシリコン材料の既知の粘弾性特性を比較することにより,粘弾性特性計測システムの精度向上を試みた.
|