2015 Fiscal Year Annual Research Report
海洋ビッグデータを用いた新しい生態系評価手法の開発
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15F15399
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Research Institution | Japan Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
長井 敏 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, グループ長 (80371962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHEN HUNG-YEN 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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Keywords | メタゲノム解析 / 有毒渦鞭毛藻 / 生物多様性 / 珪藻 / Alexandrium |
Outline of Annual Research Achievements |
受け入れ研究者が参画してきた農林水産技術会議委託プロ研である「海洋微生物による沿岸漁業被害の予測・抑制開発」のうち、麻痺性貝毒の原因渦鞭毛藻であるアレサンドリウムの増殖に関与するプランクトンの探索をメタゲノム解析の手法を用いて実施してきた。4年間にわたり、春季を中心とした大阪湾の2地点において、週1回の間隔で採集した海水サンプルのメタゲノム解析のデータを解析した。2012年は3月6日~5月28日までの13回(合計26個)、2013年は2月13日~5月28日までの16回(合計32個)、2014年は2月18日~5月28日までの15回(合計30個)、2015年は2月4日~5月25日までの17回(合計34個)のNGSデータを得た。まず、プランクトンの出現種多様性の変動についてOTUs(Operational Taxonomic Units)数として示したところ、2012、2013、2014、2015年のサンプルからそれぞれ74-168、30-144、26-156、23-127 OTUsが検出された。4ヵ年の貝毒原因種Alexandrium tamarenseの出現を見ると、2012年は、出現は確認できたが、調査期間中低密度で推移し(<800 cells L-1)、非増殖年であった。一方、2013、2015年は小規模発生年、2014年は大規模発生年であり、最大細胞密度452,670 cells L-1まで増殖し、場所によっては赤潮状態に至った。このため食用貝類が高濃度で毒化した。この様なA. tamarenseの非発生・大規模発生の状況は、NGSデータにおける相対的出現値においても検出されており、光学顕微鏡観察による直接計数値とNGSデータの相対値の間に、相関があるとは言えないものの、NGSによるA. tamarenseのモニタリング結果は、ブルームの変動をよく捉えていたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
農林水産技術会議委託プロジェクト研究「海洋微生物解析による沿岸漁業被害の予測・抑制技術の開発」や環境省環境研究推進費「島嶼-サンゴ礁-外洋統合ネットワーク系動態解明に基づく石西礁湖自然再生への貢献」で得られたメタゲノム解析データにおいて、複数の統計学的パラメータを用いて解析を進めており、論文を2個書き上げた。前者のデータについては、現在、国際氏に投稿中であり、後者については、これから投稿予定である。加えて、公的核酸データベース等のデータベースから配列情報を取得した地理的情報と配列情報を用いた解析を、緑藻類、渦鞭毛藻、珪藻、海藻およびサンゴについて実施しており、サンゴおよび海藻については、論文を作成し、現在、国際誌に投稿中である。以上から、計画以上の進捗と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、過去3年間にわたり、環境省環境研究推進費「島嶼-サンゴ礁-外洋統合ネットワーク系動態解明に基づく石西礁湖自然再生への貢献」で得られたメタゲノム解析データを重点的に解析する予定である。昨年度、1) Human impact on coral-rich areas, Chen Hungyen, Nagai Satoshi, ecology Letters (submitted). 2) Phylogenetically clumped species composition of marine green algae (Chlorophyta) in the temperate zone, Chen Hungyen, Nagai Satoshi, J. Biogeography (Submitted). 3) Bayesian inference of environmental effects and human-induced disturbance to seaweed in Japan, Chen Hungyes, Nagai Satoshi, Ecological Modelling (Submitted) の3個の論文を投稿しており、これらの査読結果が返ってくるので、アクセプトされるように努力する。さらに、公的核酸データベース等のデータベースから配列情報を取得した地理的情報と配列情報を用いた解析を、渦鞭毛藻および珪藻について実施しており、これらの解析結果をもとに論文作成し、投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)