2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内感染における非結核性抗酸菌の特異糖ペプチド脂質抗原の役割解明(2)
Project/Area Number |
15H00598
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Research Institution | 株式会社MBR |
Principal Investigator |
中 崇 株式会社MBR, 研究所, 主任研究員
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Project Period (FY) |
2015
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Keywords | 抗酸菌 / glycopeptidolipid / 肺MAC症 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】肺MAC症は結核に類似した病変を生じ、非結核性抗酸菌症の重大な呼吸器疾患である。MAC菌は特異糖ペプチド脂質(GPL)抗原によって、28種類の血清型に分類されている。臨床分離株は、特定の血清型菌が強い病原性を示すことから、各血清型GPLと病原性の関連が示唆されているが、詳細な宿主応答機構は解明されていない。 これまでに、MAC症臨床分離Kull株の天然型GPL(intact GPL, iGPL)6種のうち、アセチル(Ac)基が一つ付加したmono-Ac iGPLのみが、TLR2に認識されることから、細胞内感染Kull株は、Ac基によってGPL糖鎖を修飾し、TLR2感知から回避している可能性を示唆する知見を得た。 さらに本研究では、細胞内感染時におけるiGPLの分子種動態変化を詳細に検証し、細胞内感染におけるMAC菌GPLの役割を解明することを目的とした。 【研究方法】マクロファージ系細胞株にKull株を感染させ、経日的に回収した細胞内感染菌から総脂質を抽出し、MALDI/TOF MS分析によって、iGPLの分子種組成変化を解析した。 【研究成果】細胞内感染菌では、感染4日後以降にdi-およびtri-Ac iGPLが増加傾向を示し、特にtri-Ac iGPLの増加が顕著であった。さらに感染菌では、構造未知のtri-Ac iGPLが感染後に継続的に増加し、非感染菌ではほとんど検出されない新たなiGPLを合成することが明らかとなった。このことから、細胞内感染菌はiGPLのAc基修飾に加えて、新たなiGPL合成により、iGPL分子種を多様化したことで、TLR2の認識回避を可能にした要因の一つであると考えられる。 以上から、さらに天然型GPLのAc基転移酵素遺伝子や感染菌にのみ出現するiGPLの動態変化を追うことで、GPLと免疫回避の関係がより明確になると考えられる。
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