2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物性機能物質の炎症制御機構解析-慢性炎症を基盤とした生活習慣病対策-
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15H01767
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
上原 万里子 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (20211071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 信之 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (50370135)
井上 博文 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (10639305)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フィトケミカル / 炎症制御 / ロコモティブシンドローム / メタボリックシンドローム / シグナル伝達 / ポリフェノール / 含硫化合物 / 骨粗鬆症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物性機能物質の抗炎症作用に着目し、慢性炎症により引き起こされるロコモティブシンドロームとメタボリックシンドロームの同時予防を目指している。初年度では、炎症制御により、その分化が抑制される破骨細胞(OC)を主な試験対象として、数種のphytochemicalのスクリーニングを行ったところ、イソフラボンの代謝産物であるequolと含硫化合物のsulforaphaneの効果が高いことを確認したことから、本年度では、これらを中心に、そのメカニズム解析のための更なるin vitro試験と骨粗鬆症またはⅡ型糖尿病モデル動物を用いたin vivo試験を行った。 以前の動物試験により、equol鏡像異性体では生体利用率が異なる為、(S)体の方が骨量減少抑制作用を強く発揮することを確認しているが、詳細は不明であった。本年度は初代培養系骨髄細胞(BMC)とマクロファージ系のRAW264.7細胞を用いて、(S)体と(R)体のOC分化抑制作用を比較したところ、BMCでは、(R)体の方が強く、RAWでは(S)体と(R)体の差は認められなかった。この一因として、BMCには骨芽細胞(OB)も含まれており、OCはOB由来のRANKLにより分化誘導が促進されることから、BMCを用いた系では、(R)体がOBのRANKL抑制を介して、OC分化を阻害していることを推測したが、未だ詳細については検討中である。in vivo試験での鏡像異性体の生体利用率の差については、再吸収時の脱抱合の違いを推測し、鏡像異性体単回投与とCaco-2細胞実験により、ほぼ確認が出来ている。SulforaphaneのOC分化抑制作用は、STAT1を介したOC融合因子(DC-STAMP,OC-STAM)阻害によることを見出し、sulforaphane配糖体投与の2型糖尿病・続発性骨粗鬆症モデルの骨量減少抑制作用も確認出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イソフラボン代謝産物equolについては、鏡像異性体のin vitroとin vivoの効果の差について、推測を裏付ける幾つかの結果が得られた。その差異の詳細なメカニズム解析は次年度に行うこととするが、含硫化合物については、DNAマイクロアレイ解析で変動した破骨細胞分化関連分子の特定を行い、変動した分子の遺伝子発現およびタンパク質発現等の更なる詳細な解析を行い、破骨細胞分化制御についての細胞内阻害経路を明らかにした。また、Sulforaphaneは、破骨細胞の分化を抑制する濃度では、骨芽細胞には影響を及ぼさないことを確認し、3種の疾患モデル動物に対する投与試験等も行なったことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、equol鏡像異性体のin vitroとin vivoの効果の差異についてのメカニズムを明らかにし、実際にサプリメント等で摂取する際、(R)体と(S)体では、どちらの鏡像異性体がより効果的であるかを提案する。また、これらの鏡像異性体を用いて、骨粗鬆症モデルマウスへの高容量投与・短期間飼育は確認済みだが、さらに、ヒトでの摂取量を考慮した低容量投与での長期間飼育を行い、安全性を確認しつつ、骨・脂質代謝に対する効果の検討を行う。 Sulforaphaneについては、疾患モデル動物への効果があまり強くなかったため、出来れば効果を最大限発揮出来るモデル動物の検討を行いたい。 また、本研究により、抗炎症作用を有する植物性機能物質が、ロコモティブシンドロームに有効である可能性はある程度示されたが、メタボリックシンドロームに対する有効性についてはデータが少なく、equolやsulforaphane以外の、初年度スクリーニングを行った植物性機能物質の中から幾つかについて再度注目し、脂肪細胞(in vitro)と肝臓(in vitroとin vivo)を中心に、組織の病理学的解析も含めて検討するなど、補足データを加えて、全体を取り纏める。
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Research Products
(12 results)