2016 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外光吸収色素のバンドギャップ制御による未利用太陽光エネルギー変換
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15H02172
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
木村 睦 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60273075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 正悟 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (10419418)
小林 長夫 信州大学, 繊維学部, 特任教授 (60124575)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フタロシアニン / 近赤外光 / バンドギャップ / 色素増感太陽電池 / 吸着 / 電子移動 / エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光エネルギーのうち40%を占める近赤外光領域は有効利用できておらず、この領域を利用できる色素分子の創成が必要とされている。そこで、近赤外光領域に吸収を持つ金属フタロシアニン錯体の精密なバンドギャップ制御手法を開発し、近赤外光領域に特徴的な吸収を持つ色素分子の創成を目的とし研究を進めている。これまでに得た成果を元に、今年度は下記の成果を得た。 1. 光補集領域の拡大:ナフタロシアニン骨格を持ち、周辺置換基および吸着基構造を最適化した色素を合成したところ、色素増感太陽電池における光捕集領域を860nmまで拡大できることを見出した。 2. 光捕集の全領域化:チオフェンを導入した非対称性フタロシアニン色素を合成したところ、光捕集領域の長波長化とともに可視光領域の吸収が可能となり、800-350nmの可視光から近赤外光まで広範囲に光エネルギー変換できる色素を得ることに成功した。 3. ドナー性側鎖の導入法の開発:より長波長化を目指す目的で、分子内電荷移動構造の導入を行った。ドナー性のあるカルバゾールを宿環した新規なフタロシアニン錯体を合成し、吸収スペクトルの違いに関し詳細な研究を行った。 4. ラジカルかによる長波長化:中心金属にリンを持ち立体障害によるフタロシアニン環の歪みを導入することによって、安定ラジカルになることを見出し、1000nm付近まで吸収できることを明らかとした。 以上のことから、金属フタロシアニン錯体の吸収波長とエネルギー準位の制御手法を確立しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
共役拡張・環歪み制御・会合制御など様々な構造変更による金属フタロシアニン錯体の波長制御手法を見出し、これらの分子技術によって色素増感太陽電池における光補修領域を近赤外光領域に拡張することができた。さらに、計算化学や高速分光測定によって、色素の電子状態制御と電子移動速度との相関に関し知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
バンドギャップ幅の制御には成功しているが、HOMOとLUMOのエネルギー位置の精密制御に関し最終年度研究を進める。太陽電池のみならず、光触媒や光線治療用色素などへの展開も進める。
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Research Products
(6 results)