2015 Fiscal Year Annual Research Report
化学ツールを活用したヒトゲノムの修飾・損傷の精密検出とニュー・ゲノム科学の創成
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15H02189
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
小宮山 眞 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, NIMS招聘研究員 (50133096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須磨岡 淳 東京工科大学, 工学部, 教授 (10280934)
徐 岩 宮崎大学, 医学部, 教授 (40506763)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゲノム / PNA / インベージョン / ゲノム断片分離 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々がすでに開発したゲノム・マニピュレーション法を活用して、”分子情報に基づくニュー・ゲノム科学”を構築することを目的とする。すなわち、ヒトゲノムから所定の小断片を正確に切り出し、これを詳細に解析して、「ゲノム中のどの核酸塩基がどのような化学修飾や酸化損傷を受けているか?」を明らかにする。また、ターゲット部位を集中的に探索することにより、従来法では容易に検出できなかった新たな修飾塩基の効率的な発見に努める。 今年度は、PNAをプローブとしてアフィニティー分離し、ヒトゲノムから所定断片を効率的に精製することに成功した。入手したゲノム断片は、多くの使用目的には十分に高い純度を持ち、様々な応用が可能である。しかし、さらに広範な用途に使用するには選択性をさらに高める必要がある。そこで、分離精製断片のアフィニティー分離の際の吸着・脱着条件のさらなる改良が必要である。種々検討を重ねた結果、分離精製断片中の不純物(目的物以外のゲノム断片)は、主として、PNAによる断片の非特異的吸着によるものであることが分かり、非特異的吸着断片の除去が最大の課題であることが明らかになった。そこで、今後は、PNA複合体の安定性を詳細に解析し、目的断片を安定に保持したままで非特異的吸着物を除去できる条件をまず確立する。これが次年度の主要課題であり、これを用いて、所定断片の高純度分離法を確立する。そのうえで、当初の目的である”分子情報に基づくニュー・ゲノム科学”を構築する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、PNAの選択的結合能を活用したアフィニティー分離が、ヒトゲノムから所定断片を取得するのに極めて有用であることをすでに明らかにした。この手法は、塩基配列やサイズの制限なしに、巨大ゲノムから所定の断片を得ることができる唯一の方法であり、その確立は関連科学のさらなる進展に必須である。 ヒトゲノムから所定断片の回収率は、すでに十分に高い。ただし、さらに有用な分離法の確立のために残された課題は、精製断片の純度のさらなる向上である。上記の通り、得られた純度は通常の使用目的には十分に高いが、さらに高い選択性が望ましいのは言うまでもない。そこで、非特異的に吸着したゲノム断片を洗浄過程で十分に除去する必要があるが、そのためには、この過程で目的断片が安定に保持されている必要がある。この課題を解決し、あらゆる目的に使用可能な高純度のゲノム断片を調製する手法を確立する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の課題である純度の向上には、目的断片ならびに非特異断片とPNAプローブがどのような強度、安定性で結合するのかに関する詳細な物理化学的情報が必要となる。そこで、塩濃度、温度、PNA濃度などの条件を変えて、基礎的情報をまず得る。さらに、水素結合阻害剤や有機溶媒などの添加効果についても追究する。こうして、洗浄過程で非特異的吸着物が効率的に除去され、高純度のゲノム断片が取得できる手法を確立する。 そのうえで、ゲノム断片をバイサルファイト法ならびに次世代シーケンサーを用いて解析し、メチル化サイトを精密に決定する。比較対象として、ゲノムを直接に解析した場合の結果と比較し、所定断片の分離に基づく本手法の優位性を確認する。さらに、染色体末端に存在するテロメアを選択的に分取し、その中の酸化損傷を解析する。また、分取断片を解析し、新規修飾塩基を探索する。こうして、ゲノムの修飾や損傷に関する分子情報を入手し、ニュー・ゲノム科学の創成に寄与する。
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Research Products
(8 results)