2016 Fiscal Year Annual Research Report
分極制御による可視光応答・高耐久性窒化物半導体人工光合成デバイス
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15H02238
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 正和 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90323534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 克司 北九州市立大学, 付置研究所, 教授 (80444016)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光電気化学 / 窒化ガリウム / 分極制御 / 表面構造 / フェルミエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
表面構造による液中化学種・バンド端エネルギーのオフセットの測定法を確立するため,銀塩化銀標準電極電位に対してモデル電極として用いたn型GaN光電極が有する電位(電子擬フェルミ準位の電位)を開放電位として測定し,その照射光強度依存性が光電極表面構造により異なる様子を詳細に検討した.光電極と同様に光励起キャリアの蓄積により擬フェルミエネルギーの分裂幅を増大させて外部回路に仕事を行う太陽電池においては,照射光強度の対数に対して線形に開放電位が増大することが知られている.一方,今回解析したn型GaN光電極に関しては,光強度が非常に弱い領域で,光強度を増大させても開放電位が変化しない現象が見いだされた.これは,n型GaNのバルク欠陥あるいは半導体/電解液界面に存在する界面準位が光励起キャリアの再結合を促して,光強度の増大にも拘わらずキャリア濃度が増大しない現象が観察されたものと考えられた.すなわち,半導体界面物理で広く論じられているフェルミレベルのピニングが起きていることが強く示唆された.そこで,n型GaN光電極の表面を電気化学還元すると上記ピニングの程度が異なることが観察されたため,半導体/電解液界面の化学的状態が光電極の機能に大きな影響を与えると結論された.そこで,光アノードにおける酸素発生に有効な触媒として知られている酸化ニッケルを微粒子状にn型GaN光電極の表面に導入した結果,酸化ニッケルの表面修飾法次第でフェルミレベルのピニングが大きく異なり,良好に導入できた場合にはピニングが抑制されて弱い照射光のもとでも電子の擬フェルミレベルが上昇しやすいことが発見された.これは,表面構造の制御が光励起キャリアの蓄積による自由エネルギーの上昇を助け,光電極の反応性を向上させることを明確に示す結果である.以上の結果を開発中のフォトカソードに応用するため,白金の光電着法を開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に得られた分極制御窒化物半導体構造のバンドエンジニアリングを有効に行うためのGaN/AlN界面制御手法により,半導体光カソード内部で擬フェルミエネルギーの分裂幅を増大させることが可能になっている.今年度の成果は,擬フェルミエネルギーの分裂を妨げる主要要因である半導体表面(半導体/電解液界面におけるキャリア再結合)が,界面反応を促進するための半導体表面修飾により抑制される場合のみならず逆に促進される場合もあることを示したものである.今後,半導体表面への各種触媒の導入にあたり,今回開発した光照射による開放電位のオフセットを観察して,その半導体電極における光起電力生成への影響をスクリーニングすべきであるという指針を与えるものである.すでに本指針を援用しつつ,開発中のフォトカソード表面に半導体から溶液中分子への電子伝達を促進するための白金微粒子を光電着により導入する手法を開発している.本成果を用いてCO2還元に有効なフォトカソード表面の触媒構造を探索することで,研究目的の達成が可能であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
・フォトカソード表面への白金微粒子導入法の改良による,無バイアス下での光照射水素生成反応の達成
・CO2還元に有効なフォトカソード表面触媒構造の探索.まずは光照射しない半導体電極表面で外部電位を印加して,電気化学的CO2還元に有効な表面触媒構造を探索する.ついで,それを窒化物半導体フォトカソード表面に導入して,CO2還元能を精査する.
・フォトカソードにおいて可視光をより有効に吸収して光起電力を得るためにInGaN光吸収層を実装する.
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Research Products
(12 results)