2016 Fiscal Year Annual Research Report
Structure-function analysis and study on reaction mechanism of microbial cysteine glycosidases
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15H02443
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伏信 進矢 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00302589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石渡 明弘 国立研究開発法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 専任研究員 (70342748)
藤田 清貴 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (20381189)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酵素 / 蛋白質 / 有機化学 / 応用微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はGH127に分類されるβ-L-アラビノフラノシダーゼの結晶構造解析に成功し、その求核触媒が亜鉛に結合したCysであることを示した。これは糖質加水分解酵素では前例のない発見であったために、その反応機構についてはさらなる検証が必要である。本研究ではβ-L-アラビノフラノシド結合に作用する酵素の反応機構の詳細を明らかにするために、新規に開発する自殺基質や特異的阻害剤、反応中間体を模した擬似基質などを利用して構造機能解析を行った。また本酵素は微生物ゲノム中に多数のホモログが存在し、同様の反応を触媒するGH121の酵素も存在する。これらを利用した解析も行い、特殊な反応機構の普遍性について調べた。 本年度までに以下のような成果が得られた。まず、HypBA1を用いて、合成基質であるpNP-β-L-アラビノフラノシドとE322変異体の複合体構造を取得した。さらに、変性剤とキレート試薬の存在下での巻き戻しなどの生化学的解析により、HypBA1の活性に確かに亜鉛イオンが必要であることを示すことができた。HypBA2の立体構造をGH121に属する酵素として初めてセレノメチオニン-SAD法により決定して、その活性中心を推定した。HypBA2はN末端側のβ-サンドイッチドメインとC末端側のトーロイド型バレルフォールドを持つ触媒ドメインからなっており、GH36などと構造が類似していた。さらに、ビフィズス菌が持つHypBA1ホモログ(BLL3)の結晶化条件を決定した。BLL3はHypBA1と相同性が非常に低いにもかかわらず、その活性中心にはHypBA1と同様に亜鉛イオンが結合し、活性に必要な残基は全て保存されていた。さらに、植物病原菌が持つHypBA1ホモログの結晶化条件を決定した。また、理研グループは合成基質methyl-β-L-アラビノフラノシドおよびその他の基質や阻害剤の合成と供給を行なった。鹿児島大のグループは、ホモログの機能解析を行い、植物病原菌であるXanthomonas属の持つホモログの機能解析も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)HypBA1およびGH121の構造機能解析 昨年までに決定した反応前の基質(pNP-β-L-アラビノフラノシド)との複合体について、水素結合していたTyr残基の役割も明らかにした。機能解析では生化学的実験により、GH127で初めて亜鉛イオンを除いたアポ酵素の調製と金属の再添加による活性の回復に成功して、触媒機構解明が大きく前進した。また、昨年度までにHypBA2の立体構造をGH121に属する酵素として初めて決定することに成功していたが、多数のディスオーダー領域が存在していたため、C末端側を切断したコンストラクトを作成して結晶化したところ、ほぼ全長で電子密度が観測できる(信頼度の高い)構造が得られた。この構造を元に構造類似酵素との比較を行い、活性中心残基の推定が可能となった。BLL3の構造解析ではN末端をさらに切断したコンストラクトを用いて高分解能(1.75 A)の構造を決定することに成功し、さらにX線異常分散法により活性中心に存在する金属が亜鉛であることを特定した。植物病原菌が持つHypBA1ホモログの結晶化条件を決定して、分解能1.9 A程度のX線回折データを測定することに成功した。 2)システイングリコシダーゼの阻害剤および中間体アナログの合成 ヒドロキシプロリンが付加した基質の合成を行い、東大グループと鹿児島大グループの両方にそれぞれ十分な量提供した。 3)GH127-DUF1680とGH121の構造機能解析 B. longumが持つホモログであるBLL3の機能解析を行い、これがbeta-1,3-結合に特異的な酵素であることを明らかにした。また、Xanthomonas属(植物病原菌)の持つ複数のホモログの機能解析も行い、いずれもβ-L-アラビノフラノシダーゼであることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)HypBA1の構造機能解析 これまでに反応前の基質(pNP-β-L-アラビノフラノシド)との複合体構造と反応産物(beta-L-アラビフラノース)に成功しているため、今後は遷移状態および反応中間体の構造決定を目指す。理研グループで合成した各種阻害剤のソーキングに加えて、自殺基質の利用、C417変異体の利用、などを試す。その際、HypBA1だけでなくBLL3も複合体構造決定に用いる。GH121に関してはH28年度中にアポ体の構造決定に成功したので、本年度は複合体の構造解析を目指す。植物病原菌のDUF1680ホモログ(機能解析ずみ)のNative結晶データ測定にも成功したので、今後、セレノメチオニン置換体の結晶を用いて構造決定を目指す。 2)システイングリコシダーゼの阻害剤および中間体アナログの合成[担当:理研] これまでに構造決定済みの酵素(GH127-DUF1680, GH121)の活性中心構造に対応した自殺基質、阻害剤を合成し、東大および鹿児島大グループに提供する。 3)GH127-DUF1680とGH121の構造機能解析 B. longumが持つホモログとXanthomonas属(植物病原菌)の持つホモログの機能解析に加えて、これらの遺伝子の生化学的機能解析をさらに進める。植物病原菌のHypBA1遺伝子の破壊株を作成し、病原性に与える影響を調べる。
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Research Products
(11 results)