2015 Fiscal Year Annual Research Report
記憶想起障害モデルマウス開発による想起制御分子基盤の解明と想起障害改善への応用
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15H02488
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
喜田 聡 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (80301547)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 記憶 / 想起 / 海馬 / サーカディアンリズム / 時計遺伝子 / cAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
dnBMAL1マウスの行動学的解析の結果、社会的認知記憶課題、恐怖条件付け文脈記憶課題、物体認知記憶課題など海馬を必要とする記憶課題に共通してdnBMAL1マウスはZT10(明期開始10時間後)付近において一貫して記憶想起効率の低下を示すことが明らかとなった。従って、海馬依存性記憶想起がサーカディアンリズム制御を受けることが強く示唆された。一方で、オープンフィールドテスト等の解析では、dnBMAL1マウスは行動活性並びに不安行動には異常を示さないことが明らかとなった。また、dnBMAL1マウスの日内行動リズムも正常であり、記憶想起障害の原因は情動行動や全身性のリズムの異常によるものではないことが強く示唆された。次世代シークエンサーを用いたdnBMAL1マウス海馬のトランスクリプトーム解析により、多数の情報伝達因子群の発現変動が同定された。特に、cAMP情報伝達経路の異常が観察されたため、海馬cAMP濃度を測定した結果、dnBMAL1マウスでは、海馬のcAMP濃度の低下が観察され、ZT10付近で特に顕著であった。この結果に基づいて、薬理遺伝学的解析 (pharmacogenetics) を用いて、dnBMAL1マウスにおける想起障害の改善を試みた。cAMP濃度増加を導くロリプラムをdnBMAL1マウスに投与した結果、ZT10で観察された記憶想起障害の改善が観察された。さらに、現在、発現異常が観察された遺伝子群の記憶想起障害に対する役割の解析を試みている。一方、dnBMAL1マウスでは前脳領域の広範囲でdnBMAL1が発現しているため、海馬の時計機能の障害により、記憶想起障害が観察されるのか明確にできないため、アデノ随伴ウイルスでdnBMAL1を発現するシステムを整備し、領野特異的にdnBMAL1を発現させた影響の解析を開始した。さらに、脳搭載型蛍光顕微鏡を用いたGCaMP6によるフリームービング時の海馬CA1ニューロンのカルシウムイメージング手法のセットアップを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記憶想起のサーカディアン制御を司る情報伝達経路の同定が大いに進展し、想起制御遺伝子群も明らかになりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
dnBMAL1を発現するアデノ随伴ウイルスを野生型マウスに導入して、想起効率のサーカディアン制御を担う脳領野を同定し、記憶想起効率のサーカディアン制御を行う責任領域を明らかにする。この結果を基にして、想起効率のサーカディアン制御を担う神経回路を予測する。さらに、次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析の結果に基づき、想起制御遺伝子候補群を同定し、これら遺伝子群の役割の解析を行う、さらに、脳搭載型蛍光顕微鏡を用いて、GCaMPによるフリームービング時の海馬CA1ニューロンのカルシウムイメージング行い、dnBMAL1マウスの想起障害時の海馬の活性をイメージングする。一方、転写因子CRESTのコンディショナル変異マウスの解析を進め、BMAL1との関係性を解析する。
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Research Products
(34 results)