2016 Fiscal Year Annual Research Report
TRPチャネルとanoctamin連関の構造基盤、生理学的意義の解明と治療戦略
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15H02501
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
富永 真琴 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90260041)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生理学 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) TRPV4とanoctamin 1 (ANO1)の複合体形成をDuolink assayで確認した。野生型マウスとTRPV4欠損マウスの行動を観察し、エサを食べるときの飲水がTRPV4欠損マウスで有意に多いことを観察し、TRPV4欠損マウスはdry mouth表現型を呈すると結論した。さらに、アセチルコチンによる唾液分泌が温度上昇で有意に増大し、それがTRPV4依存性であることを、TRPV4欠損唾液線を用いて検証した。2) mentholがANO1を抑制することを見出したことから、化学物質をスクリーニングし、4-isopropylcyclohexanolがより有効なANO1阻害剤であることを見出した。4-isopropylcyclohexanol は濃度依存的にANO1活性を阻害し、IC50は約400μMであった。4-isopropylcyclohexanol は、マウス感覚神経においてカプサイシンによる活動電位発生を有意に抑制し、マウス行動実験においてカプサイシンによる疼痛行動を有意に抑制した。さら、4-isopropylcyclohexanol は、マウスおよびヒトのTRPV1, TRPA1, TRPM8, TRPV4機能を阻害することも明らかになった。3) 胆汁鬱滞時に増大するリソフォスファチジン酸(LPA)は痒み物質として知られている。LPAがマウス感覚神経の代謝型LPA5受容体に作用してその下流でLPAが再合成され、細胞内からTRPA1, TRPV1を活性化することを見出した。TRPA1, TRPV1がLPAによる痒みに関与することをTRPA1欠損マウス、TRPV1欠損マウスを用いて明らかにした。さらに、LPAが作用するTRPA1の細胞内にあるアミノ酸残基を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) マウス脳脈絡叢上皮細胞で発見したTRPV4/ANO1機能連関がマウス唾液腺腺房細胞、マウス涙腺腺房細胞でも機能していることが明らかになり、水分泌を伴う多くの外分泌腺機能に関わることが明らかになったのは大きな進展であり、TRPV4/ANO1複合体が唾液分泌および涙分泌促進の新たな標的となるものと期待される。2) Mentholは古くから鎮痛薬として使用されているが、その分子メカニズムは明らかでなかった。Mentholが強いANO1阻害作用を持つことが明らかになったことは、大きな進展であり、また、より簡単な構造の化合物4-isopropylcyclohexanolに効果があることが分かったことの意義は大きい。4-isopropylcyclohexanolはANO1, TRPV1, TRPA1, TRPM8, TRPV4の機能阻害効果も示すことから、新たな鎮痛薬開発につながるものと期待される。3) リソフォスファチジン酸(LPA)は、起痒物質として知られながらそのメカニズムが明らかでなかったことから、LPAの作用メカニズムが解明されたことの意義は大きい。鎮痒剤はかぎられており、今後、LPA5受容体、LPA合成に関わる酵素(phospholipase Dなど)、TRPA1, TRPV1が胆汁鬱滞時の痒み抑制剤開発につながるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえ、次のことを進めたい。① TRPチャネルとanoctamin1の機能連関スクリーニング 哺乳類28のTRPチャネルのうち、応募者が研究している9つのマウス温度感受性TRPチャネル(TRPV1, TRPV2, TRPV3, TRPV4, TRPM2, TRPM4, TRPM5, TRPM8, TRPA1)とマウスTRPP3チャネルの計10と4つのマウスanoctamin1(ANO1)の機能連関のスクリーニングを行う。HEK293T細胞にTRPチャネル1種類とANO1を共発現させて、パッチクランプ法を用いてTRP刺激物質投与でクロライド電流が活性化されるかどうか、を指標にスクリーニングする。② TRPチャネルとanoctaminが物理的に直接結合していることの生化学的解析 ③ 4-isopropylcyclohexanolの作用ドメインの解明 4-isopropylcyclohexanolはANO1, TRPV1, TRPA1, TRPM8, TRPV4(マウスおよびヒトクローン)の機能阻害効果も示すことから、アミノ酸配列の比較解析および他の種のANO1, TRPV1, TRPA1, TRPM8, TRPV4機能への4-isopropylcyclohexanolの効果を解析して、4-isopropylcyclohexanolが複数のチャネル機能を阻害するメカニズムを解明する。
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Research Products
(9 results)