2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規抗癌剤開発に向けた腫瘍血管新生・癌転移阻害ペプチドの創成
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15H02503
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金保 安則 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00214437)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 癌 / 腫瘍血管新生 / 転移 / 浸潤仮足 / 低分子量G蛋白質 / Arf6 / GAP / GEF |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍形成と癌細胞転移を同時に阻害する創薬リードペプチドを創出するための基盤研究として、平成27年度は、腫瘍血管新生と癌細胞転移を制御するArf6シグナル伝達機構の解析、およびこれらの両現象を制御するArf6シグナル伝達への影響を評価できるハイスループットアッセイ系の構築を計画し、以下の結果を得た。 転移能が低い乳癌細胞株MCF7細胞と転移能が高い乳癌細胞株MDA-MB231細胞において13種類のArf6 GAPsの発現量を解析したところ、ARAP3のみがMDA-MB231細胞において高い発現量を示した。MDA-MB231細胞のARAP3をノックダウンすると、EGF依存的な浸潤仮足形成が抑制された。この抑制は、野生型ARAP3を再発現すると解除され、Arf6 GAP欠失型ARAP3変異体の再発現では解除されなかった。これらの結果は、ARAP3はArf6 GAP活性を介して乳癌細胞の浸潤・転移を制御することを示唆している。EGFによる癌細胞の浸潤仮足形成にはEGF受容体(EGFR)のリサイクリングが必要であることが知られているが、ARAP3をノックダウンするとEGFRはエンドソームに蓄積してEGFRのリサイクリングが遅延することが明らかとなった。さらに、ARAP3をノックダウンするとEGFR陽性エンドソームでPIP5K産物であるPI(4,5)P2量が増加し、このPI(4,5)P2量の増加はPIP5Kαのノックダウンにより解除された。この結果は、Arf6の下流でPIP5Kαがエフェクターとして機能していることを示唆している。このように、癌細胞転移を制御するArf6シグナル伝達機構の一部を明らかにすることができた。また、ハイスループットアッセイ系については、現在構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、上記の研究実績の概要に記載した浸潤仮足形成において機能するArf6 GAPの同定に加えて、癌細胞転移において機能するArf6 GEFの同定、腫瘍血管新生において機能するArf6 GAPの同定、および腫瘍血管新生と癌細胞転移に関わるArf6エフェクター分子の同定を計画していた。平成27年度に、癌細胞転移において機能するArf6 GEFを同定するために、これまでにArf6 GEFとして機能することが報告されている全てのGEFをMDA-MB231細胞でノックダウンして浸潤仮足形成への影響を検討したところ、期待に反して、ほとんど全てのArf6 GEFのノックダウンにより浸潤仮足形成が抑制された。このことは、Arf6が浸潤仮足形成プロセスにおける複数のステップに異なるArf6 GEFが関与している可能性を示唆しているものの、浸潤仮足形成のどのステップにどのArf6 GEFが関与しているのかを明らかにしない限り、上記の結果が正しいかどうかを判断することができない。これが平成27年度に計画した研究を遅らせた原因となっている。 また、上述のように、浸潤仮足形成において機能するArf6 GAPはARAP3であることを同定しており、論文発表を行なうために、ARAP3がどのような分子メカニズムで浸潤仮足形成を制御しているのかを詳細に解析したためにかなりの時間を費やした。このことも、平成27年度の研究計画を送らせる原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、腫瘍血管新生と癌細胞転移を同時に阻害する創薬リードペプチドの創出が極めて重要な課題である。これまでの研究成果から、Arf6の上流と下流でそれぞれArf6 GEFとArf6 GAPがArf6の活性型と不活性型を適切にサイクルさせることにより両現象を制御するという予備的知見を得ている。従って、平成28年度は、腫瘍血管新生と癌細胞転移を制御するArf6シグナル伝達機構の解析と並行して、Arf6の機能を抑制するリードペプチドを探索する。すなわち、まず、Arf6に結合するペプチドを探索し、そのペプチドのうち、浸潤・転移能が高いヒト乳癌細胞株MDA-MB-231細胞においてHGFによる浸潤仮足形成を阻害し、かつHGFによる血管内皮細胞のin vitroチューブ形成を抑制する創薬リードペプチドを同定することに焦点を当てる。さらに、この創薬リードペプチドをファーマコフォアモデルを利用して最適化する。 平成29年度は、腫瘍形成および癌細胞転移に対する構造最適化ペプチドの有効性を評価する。腫瘍形成の有効性については、B16メラノーマ癌細胞あるいはLewis lung carcinoma癌細胞をマウス移植し、その直後、浸透圧ポンプで最適化ペプチドを投与し、経日的にマウス個体内で形成される固形腫瘍のサイズを測定する。癌細胞転移に対する最適化ペプチドの有効性については、ルシフェラーゼを安定発現させたMDA-MB-231細胞をマウスの乳腺に移植し、その後、静脈注射で構造最適化ペプチドを定期的に投与した後に、経日的にルシフェリンを静脈注射してマウス個体内で癌細胞を発光させ、肺へ転移したヒト乳癌細胞株MDA-MB-231細胞をIVISイメージングシステムで解析する。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] PKN3 is the major regulator of angiogenesis and tumor metastasis in mice2016
Author(s)
Mukai H, Muramatsu A, Mashud R, Kubouchi K, Tsujimoto S, Hongu T, Kanaho Y, Tsubaki M, Nishida S, Shioi G, Danno S, Mehruba M, Satoh R, Sugiura R
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Journal Title
Sci. Rep.
Volume: 6
Pages: 18979
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] PRMT8 as a phospholipase regulates Purkinje cell dendritic arborization and motor coordination2015
Author(s)
Kim JD, Park KE, Ishida J, Kako K, Hamada J, Kani S, Takeuchi M, Namiki K, Fukui H, Fukuhara S, Hibi M, Kobayashi M, Kanaho Y, Kasuya Y, Mochizuki N, Fukamizu A
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Journal Title
Sci. Adv.
Volume: 1
Pages: e1500615
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Arf6 regulates tumor angiogenesis and growth through HGF-induced endothelial β1 integrin recycling2015
Author(s)
Hongu T, Funakoshi Y, Fukuhara S, Suzuki T, Sakimoto S, Takakura N, Ema M, Takahashi S, Itoh S, Kato M, Hasegawa H, Mochizuki N, Kanaho Y
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Journal Title
Nat. Commun.
Volume: 6
Pages: 7925
DOI
Peer Reviewed
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