2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規抗癌剤開発に向けた腫瘍血管新生・癌転移阻害ペプチドの創成
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15H02503
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金保 安則 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00214437)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん / 腫瘍血管新生 / 浸潤 / 浸潤仮足 / 低分子量Gタンパク質 / Arf6 / 抗がん剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、低分子量Gタンパク質のArf6は腫瘍血管新生とがん細胞の浸潤・転移に必須であることを検証した。従って、平成28年度は、Arf6をターゲットにして腫瘍血管新生とがん細胞の浸潤・転移を同時に阻害できる創薬リードペプチドを創出することを目指し、以下の結果を得た。 α-ヘリックス立体構造を固定化した約35アミノ酸残基からなるデノボペプチドのファージ表層提示ライブラリーを作製し、このペプチドライブラリーを用いて、エライザーアッセイ法にてクラスIとクラスIIのArfファミリーメンバーであるArf1とArf3には結合せずに、Arf6に特異的に結合するペプチドの探索を行った。その結果、Arf6に特異的に結合する29種類のペプチドを同定した。 次いで、これらのペプチドのうち、どのペプチドがArf6の活性化を阻害するかを検討するためのアッセイ方法の構築を試みた。その結果、以下のアッセイ方法を確立した。大腸菌で発現させたArf6とArf6特異的なguanine nucleotide-exchange factor(GEF)であるARNOのSec7領域ペプチド(ARNO-Sec7)及びGTP-BODIPYをインキュベートすると、ARNO-Sec7の作用によりGTP-BODIPYがArf6に結合してArf6が活性化されて蛍光を発する。この反応系にArf6に特異的に結合するペプチドを添加し、ペプチドがArf6の活性化を阻害すると蛍光強度が減少するはずである。このアッセイ法を用いて、上述したArf6に特異的に結合する29種類のペプチドについて解析した結果、1種類のペプチドがArf6の活性化を約70%抑制し、その他のペプチドによる阻害は軽微であった。このように、平成28年度は、Arf6が腫瘍血管新生とがん細胞の浸潤・転移の両方に重要な役割を果たしていることを検証すると同時に、Arf6の活性化を特異的に阻害する創薬リードペプチドを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍血管新生とがん細胞の浸潤・転移におけるArf6シグナル伝達機構の解析については、十分な結果が得られているとは言い難いが、平成28年度の大きな目標である「創薬リードペプチドの創出」に関しては期待通りの研究成果が得られており、今後の研究の進展が大いに期待されるので、「おおむね順調に進展している」と評価した次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、平成28年度に、Arf6の活性化を阻害する創薬リードペプチドを創出した。今年度は、以下のように研究を推進する計画である。 細胞膜透過性創薬リードペプチドの創出:ペプチドが細胞膜を透過するためには、ペプチドの末端に9個のアルギニン残基を付加する必要がある。得られた創薬リードペプチドに9個のアルギニン残基を付加して、本ペプチドが血管内皮細胞と乳がん細胞の細胞膜を透過するかを解析する。細胞膜の透過は、創薬リードペプチドをテトラメチルローダミンで蛍光標識し、細胞へ透過した傾向標識ペプチドを蛍光顕微鏡で観察する。 創薬リードペプチドのin vitroチューブ形成と浸潤仮足形成に対する効果の解析:腫瘍血管新生とがん細胞の浸潤・転移に対する影響は、in vitroで血管内皮細胞のチューブ形成と浸潤仮足形成に対する影響を解析することにより評価が可能である。申請者はこれまでに、HGFで誘起されるin vitroチューブ形成と浸潤仮足形成においてArf6が重要な役割を果たすことを明らかにしているので、上記の細胞膜透過性創薬リードペプチドのHGF誘起性in vitroチューブ形成と浸潤仮足形成に対する効果を解析し、その有効性を評価する。 創薬リードペプチドのin vivo腫瘍形成とがん細胞の転移に対する効果の解析:B16メラノーマがん細胞のマウスへの移植により形成される腫瘍の増大とマウスにおける高浸潤性乳がん細胞株MDA-MB-231細胞の肺転移に対する創薬リードペプチドの効果を検討する。主要の増大は、B16メラノーマがん細胞のマウスへの移植後2週間目に摘出して、その体積を測定して評価する。肺転移に対する効果については、GFPを発現させたMDA-MB-231細胞をマウスの微静脈より移植して2週間目に肺を摘出し、転移したMDA-MB-231細胞の蛍光を測定して評価する。
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Research Products
(19 results)