2016 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstitution of Society during Post-conflict Period: Case Studies in South Asia
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15H02599
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤倉 達郎 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (80419449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 篤史 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (00286923)
湊 一樹 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター南アジア研究グループ, 研究員 (00450552)
田辺 明生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30262215)
山田 協太 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携助教 (40434980)
内山田 康 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50344841)
山本 達也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70598656)
中村 沙絵 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (80751205)
中溝 和弥 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90596793)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ポスト紛争 / 暴力 / ネパール / スリランカ / インド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、長年にわたる内戦を経験し、現在はポスト紛争期にあるネパールとスリランカ、そして宗教集団やカースト集団間の紛争を繰り返し経験してきたインドを事例にとり、大規模な暴力の後に社会がどのように再編されるのかをフィールドワークによって調査し、比較の視点から記述・分析することを目的にしている。本研究では、ポスト紛争期において課題となる「記憶と弔い」「移行期の正義(transitional justice)」「復興と社会関係の再構築」という三つの問題系を文化政治的、社会的、法的、政治経済的諸側面から連関的・複合的な分析を目指している。具体的には、研究分担者や研究協力者が、それぞれのフィールドにおいて、上記の問題系にかかわるトピックについて、フィールドワークを行い、その調査にもとづく発見を、国内および海外の研究会において発表し、議論することを通じて、研究を前進させている。2016年度には、研究代表者が5月にグロアチアで行われた国際人類学会において発表を行った他、6月にAAS-in-Asiaでポスト紛争についてのパネルを組織し、そこでの議論をふまえた上で7月に京都での国内研究会でさらに検討をすすめた。また12月には、カトマンドゥのマーティン・チョータリ研究所と共催で、ポスト紛争/ポスト災害をめぐる公開ワークショップを開催した。このワークショップには研究者のみならず、紛争時の人権侵害や「移行期の正義」に取り組む法律家や人権活動家や、地震からの復興についてモニターするNGO活動家たちも参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年5月にはグロアチアで行われた国際人類学会において、代表者が研究発表を行い、6月には京都でおこなわれたアジア研究の国際学会、AAS-in-Asia において、ポスト紛争についてのパネルを組み、本研究課題の研究分担者と海外研究協力者合わせて4名が、ネパール、スリランカ、日本におけるポスト紛争/ポスト災害をめぐる事例分析を行うとともに、社会文化人類学における暴力や災害、痛みをめぐる研究動向とその問題点について議論した。6月の議論をふまえて、7月にはさらに「ポスト紛争」における「ポスト」という接頭辞を中心にした議論を京都における研究会で行なった。12月にはカトマンドゥのマーティン・チョータリ研究所と共催で、ポスト紛争/ポスト災害をめぐる公開ワークショップを開催した。 現地の事情などにより、予定していた合同臨地調査が実現できていないが、本研究計画参加者はそれぞれのフィールドで臨地研究を継続している。それらは例えば、次のようなものを含む。オリッサ州のダリト・クリスチャン焼き打ち事件以降のダリトとトライブの関係の変遷について臨地調査。これを通してトライブとダリトの相互的な不信はぬぐえず一部では悪化しているが、同時に、さまざまなかたちの連帯のための試みも少なからずあることがわかってきている。インドではまた、牝牛の屠殺禁止規定に関連して、牝牛保護運動に関連して宗教的少数派であるムスリムに対する襲撃が頻発している。この現象の背後にあるかもしれない貧困や格差の問題についての臨地調査も行っている。また、南アジアにおける現在の多くの民族紛争の背景としての、分離独立という歴史の重要性に鑑み、これまでのフィールドに、バングラデシュとパキスタンも加えて調査を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
南アジア各地における臨地調査を継続し、国内研究会や国際学会の場で、それにもとづく研究発表を行って議論を深めるというプロセスはこれまでと同様である。その議論の場として重要なものは2018年1月にカトマンドゥでNIHUとマーティンチョータリ研究所と共催する Peaceful Development in South Asia という国際シンポジウムである。このシンポジウムには本研究計画の代表者や分担者が、オーガナイザーとしてその企画に関わり、ネパール、スリランカ、インド、バングラデシュ、パキスタンをはじめとして、欧米や日本からも20名以上の研究者を招き、2日間にわたって、南アジアにおける暴力的紛争と平和的発展の可能性について議論をおこなう。ここでの発表と議論をもとにして、英文による書籍をまとめる予定である。本研究であつかう暴力、正義、記憶、復興、忘却の問題は、南アジア地域固有の現れ方をする面と、地域を超えた共通の時代的な課題を提出するという両面を持つという認識にたち、南アジアの事例と日本やヨーロッパにおける事例との比較をめぐる問題についても、臨地調査や研究会を行い、議論を深めていく。
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Research Products
(53 results)