2015 Fiscal Year Annual Research Report
基本匂い要素の解明と受容体安定発現細胞センサの開発に関する研究
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15H02730
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 孝明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 上級主任研究員 (20344187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 隆史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (60356839)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情報センシング / 匂い / 生体機能利用 / 細胞アレイ / 分子認識 / 感覚センサシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
嗅覚情報センシング利用により、遠隔的な危険物検知・捜査や対象物の加工・熟成・健康状態の判定などが可能になる。このセンシングには、色覚のR/G-Y/B基本色に対応する基本匂いの解明と、匂い情報符号化法および嗅覚センサ開発が不可欠である。本課題では、最初の基本匂いの解明を目指し、マウス行動実験で匂いの検知・識別に寄与する受容体の特徴を解析し、共通・相違要素匂いの寄与度および背側受容体の寄与を検討する。また、マウス受容体導入メダカを用い、導入受容体が匂い認識に与える影響を検討する。さらに、多種細胞センサ応答同時計測用のマクロ蛍光測定系の整備、細胞センサの改良などを目指す。 1)マウス行動実験による基本匂い要素の解析:試作Y迷路を用いたマウスの鏡像異性体ペア2種の検知・識別閾値濃度の解析から、背側受容体欠損により生じる、(+)異性体選択的な感度低下と極度の識別閾値低下を伴う識別パラドックスを発見した。この広い濃度範囲で検知可・識別不可の結果は、高感度背側受容体がフィードフォワード抑制系を介した刺激特徴的な基本匂いを強調する階層的要素匂い符号化説で説明できる。 2)特定臭検知ヒト受容体群の応答データおよび細胞アレイ用マクロ蛍光画像測定系の検討:受容体のhelix8の2番目がグルタミン酸の時のG蛋白質の3倍迅速活性化を発見し、上記成果と併せ、ヒトの受容体375種中で要素匂い形成を支配する166種の受容体を選別し、特許「匂いの評価方法」を申請した。この成果により、予定を変更し、市販のマクロズーム顕微鏡の整備を延期し、特許に関するデータ収集を優先させ、ヒトの67種の受容体の単離・発現ベクターの構築を進めた。 3)マウスS6受容体導入メダカ作製と応答解析:マウスS6受容体を嗅上皮特異的に発現させた組換えメダカの作製に取組む予定であったが、上記の特許によって本実験は不要となり、実施を中止した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本匂いを計測する方法についての基本特許「匂いの評価方法」を出願することができ、計画していた実験の一部が不要となり、最初の基本匂いを明らかにする目標を直接達成する実験が可能となった。さらに計画期間内で明らかにできる基本匂いの種類が計画以上になると期待される。この大きく進展した状況に従った方向で研究を加速するために、マクロ顕微鏡の整備を延期し、ヒト嗅覚受容体の遺伝子クローニングと発現ベクターの構築に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス嗅覚受容体を導入した遺伝子組換えメダカの作製・解析は中止し、ヒト嗅覚受容体の遺伝子クローニングと発現ベクターの構築、応答解析による基本匂いの概要を把握する方向に向かう。
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Research Products
(8 results)