2016 Fiscal Year Annual Research Report
脳内局所の人工的加温・冷却システムを応用した病態制御の試み
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15H03000
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
柴崎 貢志 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20399554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 倫保 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80196873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | TRPV4 / 脳内温度 / 冷却 / デバイス / てんかん |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施者はこれまでの研究で、37℃で一定と考えられてきた脳内温度が動物の行動や状態に応じてダイナミックに変動していることを見いだしている。さらに、この温度変化を脳内の温度センサー・TRPV4(34℃以上で活性化)が感知し、温度エネルギーを電気信号に変換することで神経活動に役立てる分子機構を見いだしてきた。本研究では、脳内を人工的に加温・冷却することでTRPV4活性を操作し、難知性神経疾患の新たな治療法へとつなげることを目指している。 冷却処置を施したマウスと無処置マウスのてんかん原性域から急性海馬スライス標本を作製し、興奮性シナプス電流を測定すると共に、ガラス電極内に入れたFura-2を用いて、Ca2+-イメージングを行い、細胞内Ca2+濃度の定量化を行った。冷却処置により、てんかん発作抑制効果は得られるけれども、神経細胞の生理学的応答性に異常化が起こらないことが確認出来た。さらに、解剖組織学的に冷却を施した領域の神経細胞形態を解析し、異常がないことを確認した。また、てんかん発作の評価尺度として筋電解析が有効であることを見いだし、この尺度を元にてんかん発作を抑制するためのレスキュー実験を行った。TRPV4は神経細胞のみならず、アストロサイト・ミクログリアにも発現していることを見いだした。そして、アストロサイトTRPV4は脳内に存在するアラキドン酸により活性化し、ギャップ結合とATP放出を介して近傍の他のアストロサイトを興奮させ、それらがグルタミン酸放出を行うことで、シナプス活性を増強していることを明らかにした。このため、てんかん病態化に伴い、ニューロンのみならず、TRPV4陽性アストロサイトの興奮性変化も病態悪化に関連している可能性が出てきた。これらの背景事情に基づき、TRPV4陽性アストロサイトの生理作用を明らかにすることも試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有効なてんかんモデルマウスを作製し、研究実施者が作製した局所組織の加温冷却デバイスを用いたてんかん原性域の冷却によるてんかん発作の抑制度合いの評価とこの処置に伴い出現すると考えられる副作用の評価を当初の実験計画通りに調べることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
てんかん原性域の冷却処置に伴う副作用は観察されなかった。次年度は研究実施者の温度可変装置に備わっている加温モードで冷却処置中にも脳内温度を正常状体に戻す処置も加えた場合のてんかん発作治療効果に与える影響を検討し、てんかん治療法の開発に向けた方策を探る。
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Research Products
(11 results)