2017 Fiscal Year Annual Research Report
運動による腸内細菌叢制御を介したメタボリックシンドローム予防効果
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15H03102
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
矢野 博己 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (20248272)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 微生物 / TLR5遺伝子欠損 / 自発運動 / 便移植法 / 次世代シーケンス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタボリックシンドロームは、我が国にとっても、欧米と同様に大きな社会問題の一つであるが、近年その原因として、腸内細菌叢に起因する代謝性疾患である可能性が指摘されるようになった。一方で、適度な運動習慣は、メタボリックシンドローム発症の予防効果や重症化抑制効果を有するとともに、近年は腸内細菌叢の変化をも誘導していることが明らかとなりつつある。しかしながら、運動習慣による腸内細菌叢の変化そのものを介してメタボリックシンドローム発症予防や重症化抑制効果か生じているのかについては、これまで明らかではなかった。 本研究課題では、自発運動を負荷したマウスを用いた実験結果から、腸内細菌叢の変化を介したメタボリックシンドローム発症予防効果が運動習慣によって期待できることなどについて、Tlr5遺伝子欠損マウスを用いた検討、便移植法による検討、さらには抗生剤除菌処理法を用いた検討などによって明らかにしてきた。 本年度は、これまでの検討結果を踏まえて、メタボリックシンドロームの重症化抑制効果が期待できるのかについて検討を行った。すなわち、すでに肥満症を発症したマウスに、自発運動を負荷したマウスから採取した盲腸便を移植し、便移植による治療効果が期待できるのかについての検討であった。その結果、運動負荷マウスの便を移植したにもかかわらず、体重増加抑制や、身体活動性の向上などの劇的な重症化抑制効果は観察されなかったが、その一方で、肝脂肪の蓄積抑制や、肝機能の改善など、一部の効果が期待できることは示された。 さらに、補助金の前倒し使用を申請、実施できたことで、次世代シーケンス法を用いた腸内細菌叢のゲノム解析が飛躍的に進んだことを受け、より詳細な検討が可能となった。次年度へ向けて、解析を継続できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験は概ね完了し、興味深いいくつかの研究成果も挙げてきている。引き続き、試料の分析とともに、実験データの解析を進めるつつ、論文執筆作業を行っており、投稿準備段階のものもある。また、関連学会での研究成果の発表を通じて、より専門的な情報交換も行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝的メタボリックシンドローム発症型(Tlr5遺伝子欠損)マウスを用いるなどして、腸内細菌叢の変化を検討するとともに 、腸内細菌叢への影響を介した運動習慣のメタボリックシンドローム発症予防効果について等の検討を行ってきた。次年度は、 本研究課題の最終年度であり、これまで得られたデータのより詳細な解析を検討することで、研究成果のまとめ(研究総括) を完了することを目的とする。 1.データ解析:個々の実験動物から得られた腸内細菌メタゲノム解析データ(多様性解析を含む)、および表現型(行動変容、 メタボローム解析、遺伝子発現結果など)に関するデータを用いて、クラスター解析やネットワーク解析等による研究成果の可視化を進めるとともに、原因菌の絞込みと腸内細菌プロファイル作製を行う。 2.研究成果の総括:論文の執筆・投稿、ならびに学会発表を行い、研究成果の公表を積極的に進める。
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Research Products
(7 results)