2015 Fiscal Year Annual Research Report
多点光ラベル解析による膜タンパク質機能構造のモニタリング
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15H03119
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
友廣 岳則 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (70357581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 順哉 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (50436789)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光アフィニティーラベル / 化学プローブ / プロテオミクス / 結合部位解析 / 分子認識 / 標的同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、X線結晶構造解析法等が適応困難なタンパク質について、その構造変化をモニターするための高性能な光ラベル解析基盤技術を確立する。具体的には、独自の光反応基(同位体を有する蛍光標識:IsoFT)の更なる高性能化を図ることで、リガンド結合ポケットにおいて1カ所のラベル解析が限界であった従来法を刷新し、複数の極微量ラベル部位の同時解析を可能にする。 まず、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)のアロステリック酵素機能調整における構造変化モニタリングを実施した。核酸系の調整因子であるADPやATPの末端リン酸基に光反応基を導入した光反応性プローブによるGDHラベルでは、主要ラベル以外に複数の微量ラベル産物が検出された。阻害実験等から、プローブが基質結合部位に特異的に相互作用すること、同じ結合ポケットの複数カ所ラベルであること、さらに別因子の添加によりラベル位置が異なることが明瞭に示された。以上のことから、本方法論により、機能ポケット構造変化を容易に追跡可能なことが示唆された。主要ラベル部位に関してはIsoFT法で容易に特定できたが、微量ラベル解析では操作が複雑化することが判明した。別途、プロテオミクスに対応するため反応基の機能化を進め、高度濃縮基ビオチン基及びクリック反応基であるエチニル基を導入した光反応基ユニットの開発に成功したことから、今後はこの反応基を取り入れた解析を進める。一方、現光反応基では反応/操作温度を厳密に制御する必要があるため、それを改良するために新たな機能性光反応基開発を進め、光誘起電子移動(PeT)機構に基づく光反応基のプロトタイプ作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目的は膜タンパク質に適応可能なラベル構造解析法の確立である。初年度では、そのプロトタイプを装着した光反応性基質プローブを作製し、多点ラベル解析評価系を確立し、さらに目的を達成するための多機能性反応基ユニットの開発を目標とした。 1.「アロステリック酵素を用いたドメイン構造解析」では、多点ラベル解析評価系としてグルタミン酸デヒドロゲナーゼのアロステリック構造変化を選択し、そのADT及びATPプローブを作製した。結果、結合ポケットの複数ラベルが確認され、本法により各種調整因子添加による複数ラベル挙動の追跡、つまり構造変化モニタリングが可能であることを示した。但し、蛍光特性と同位体効果によるLC-MS解析効率化では、膨大な夾雑物存在下での極微量ペプチドのラベル部位特定は難しいことが判明した。 2.「プロテオームにおけるラベル解析効率の評価」では、高度精製機能を兼ねたビオチンプローブにより、細胞ライセートから直接、ビオチン結合酵素である複数のカルボキシラーゼの同定、及びラベルアミノ酸の特定に成功した。これにより、プロテオームなど微量ラベル物質の同定には、その濃縮操作が極めて有効であることが証明された。 3.「多機能性反応ユニットの作成と最適化」では、プロテオミクスのための濃縮精製用タグ付き光反応基開発を目的とした。まず反応基のカルボン酸末端にビオシチンを導入した桂皮酸型光反応基を作製したが極めて溶解性が低かった。そこで親水性リンカーを導入したところ溶解性を大きく向上させることに成功した。別途、ビオチン基の替わりにクリック反応基質であるエチニル基を導入したジアジリン反応基を合成した。さらに、現反応基の反応性改善のため新たな機能性光反応基開発を進め、新しいコンセプトに基づく光反応制御型クロスリンカーのプロトタイプ作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した濃縮タグを付与した多機能性反応基ユニットを基質あるいは阻害剤に導入し、光アフィニティーラベル解析用プローブを作製する。これらを用いてプロテオーム系でのラベル解析に移行する。 1.アロステリック酵素を用いたドメイン構造解析 蛍光ペプチドピークとラベル部位を複数対応させ、結合構造情報に基づいたアロステリック酵素活性を評価することが目的となる。複数ラベルが検出されたATPプローブによるグルタミン酸デヒドロゲナーゼ解析では、微量ラベル部位の解析には、ラベルタンパク質の濃縮が必須であることが判明した。いくつかの方法論で極微量ラベル部位解析に取り組む。まず、現プローブのリン酸との金属キレートを利用した微量ラベルタンパク質濃縮を実施する。別途、ビオチン基や化学リポータータグを装着したユニットを導入したATPプローブを作製し、複数マイナーラベル解析を進める。 2.多機能性反応ユニットの作成とプロテオームラベル解析効率の評価 プロトタイプを用いた解析により極微量ラベル物質の高度濃縮はプロテオーム解析に極めて有効であることが証明された。溶解性を向上させたジアジリン反応基を細胞膜イオンチャネル阻害剤やキナーゼ阻害剤に導入する。各光プローブ作製が完了次第、光アフィニティーラベルを行い、その解析効率を評価する。別途、新規光反応基については物性や光反応性等を評価し、既存相互作用系に応用してラベル評価を実施する。
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Research Products
(9 results)