2015 Fiscal Year Annual Research Report
アジア諸語の社会・文化的多様性を考慮した通言語的言語能力達成度評価法の総合的研究
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15H03224
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
富盛 伸夫 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (50122643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 節 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50180542)
根岸 雅史 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50189362)
藤森 弘子 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (50282778)
野元 裕樹 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (10589245)
岡野 賢二 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60376829)
南 潤珍 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (30316830)
上田 広美 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60292992)
吉枝 聡子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20313273)
丹羽 京子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (90624114)
萬宮 健策 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (00403204)
高垣 敏博 神奈川大学, 外国語学部, 特任教授 (00140070)
田原 洋樹 立命館アジア太平洋大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60331138)
矢頭 典枝 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (10512379)
拝田 清 四天王寺大学, 教育学部, 准教授 (00597718)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 外国語教育 / 言語能力評価法 / CEFR / 通言語的透明性 / アジア諸語 / 社会文化的特質 / 言語類型 / 異文化間コミュニケーション能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバル化の著しい国際社会の中で日本では英語のみならず高度な複数言語能力をもつ人材を養成する課題に直面しており、外国語教育においては通言語的透明性が確保された言語能力評価システムの開発研究が急務である。他方、EUでは統合の象徴の一つでもある言語教育改革の基盤をなす「ヨーロッパ共通参照枠組み」(以下 CEFR)は、現在実施約10年を経てその理論面・実践面の実績は急速に進展し、EUにおいては言語教育の現場そのものを変容させたが、現在CEFRの世界化が進むに従い、日本語を含め非EU言語へのCEFRの適用可能性の検証が必要となっている。 本研究の範囲と目的は、第1に、アジア諸語を主たる対象とし、その社会・文化的多様性を考慮したコミュニケーション能力の教育方法を研究することにより、より汎用性の高く透明性の高い言語能力評価システムを研究開発すること、第2に、EU内で進む社会・文化的多様性の中でコミュニケーション能力を勘案したCEFR改革に関する最新動向を調査しCEFRの有効性に関わる再検証を行うこと、第3に、言語能力評価法の新たな開発により高等教育のみならず中等教育との接続や、生涯教育への応用など、現代日本社会のニーズにも対応した成果を社会に還元することも視野に入れること、である。 平成27年度は課題研究の重要度と緊急度を考慮して、以下の優先順で実施し成果公開した。(A班)国際シンポジウムや国際ワークショップの開催により、国際連携アジア・アフリカ研究コンソーシアム(CAAS)参加大学及びアジア諸大学の研究者とともに、CEFRの能力評価記述文(descriptors)の妥当性を評価した。(B班)調査対象地におけるCEFR適用の再検証および適用方法にかかわる最新動向調査を行った。(C班)国内の先進的な外国語教育に取り組む高等学校や教育委員会に聞き取り調査を行い中等教育との接続を研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は課題研究の活動は東京外国語大学語学研究所を拠点として、国際シンポジウムや国際ワークショップを前倒しに開催するなど、当初の計画以上に順調に遂行された。 8月1日および2日には国際ワークショップ「卓越した外国語教育科学」(共催)を企画開催して、香港教育学院から講演者を招聘し、また代表者富盛伸夫他が本科研の成果を発表(英語)した。 11月29日外国語教育学会において、代表者富盛伸夫他が本科研の研究成果として「アジア諸語学習者における言語別CEFR自己評価の傾向と社会・文化的コミュニケーション能力の測定に関わる諸問題」を発表し、東京外国語大学で行ったアジア諸語学習者アンケートの分析を通して、言語類型の異なりや語用論的ストラテジーを配慮した「社会・文化的コミュニケーション能力」に対応した通言語的能力評価尺度設定の問題点を論じた。 さらに本年3月18日には国際シンポジウム(共催)「外国語教育における能力指標 -CEFRと日本語教育-」を開催し、国際連携アジア・アフリカ研究コンソーシアム(CAAS)参加大学であるオランダ・ライデン大学やシンガポール国立大学からの招聘講師とともに富盛、藤森弘子が発表しCEFRの能力評価基準の妥当性を議論・検証した。アジア諸語教育におけるCEFR適用にかかわる最新動向調査を根岸雅史がバンコクで行い、また日本語教育関係者に本科研に関する成果を発表した。国内の英語以外の外国語教育に取り組む九州地区の高等学校や教育委員会には研究協力者山崎吉朗が実施した聞き取り調査から有益な知見が得られ公開を準備中である。 アジア諸語教育に関わる各分担者はアジアの多様な社会・文化的コンテクストを通言語的枠組みの中に捉えるために必要となる発話の社会言語学的コンテクスト分析、談話ストラテジーやポライトネスの表れ方など、語用論的研究を協同して推進し次年度の研究準備をすすめた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究計画は、統括班の責任のもと3つの班ごとの研究課題に対応した作業を継続する。 (A班)アジア諸語地域の社会・文化的多様性を考慮したコミュニケーション能力教育方法の研究と通言語的かつ透明性の高い言語能力評価システムの開発研究を課題として、言語類型的に異なる特質を持つ諸言語の到達度評価方法を比較するため、アジア諸国の高等教育機関での言語教育従事者(教師等)や現地学習者に対する聞き取り調査を行う。また、アジアの多様な社会・文化的コンテクストを通言語的枠組みの中に捉えるには、西欧と異なる社会・文化的コミュニケーション能力の測定法を基盤的研究として包括する。 (B班)CEFRの再検証および非EU言語への適用方法と社会文化的コミュニケーション能力評価法開発にかかわる最新動向調査を行い、現在EUで進められているCEFRの非EU言語にも適用可能な改編について研究交流を進め、上記アジア諸語への適用に向けて参考とする。 (C班)中等教育及び社会的ニーズに対応した外国語能力到達度評価基準に関する研究は継続的に国内の多様なレベルの外国語能力記述方法の研究動向の調査を行い、情報発信につとめる。 特に、A班とB班の分担者は担当のアジア諸国およびEUの高等教育機関に研究連携及び現地調査に赴き、社会・文化的コミュニケーション能力の測定方法と教育プログラムの研究を進める。その成果の報告を定期的に3班の合同研究会を開催して集約し、調査報告書やWeb上での成果公開に向けた作業を行う。平行して、 国内外の研究者と国際研究集会を企画し年度内に実施する。 以上の計画遂行上、万一分担者の事情等により研究計画に変更がある場合には、統括評価班及び運営委員会での合意のもとで、調査対象等を変更する。しかし、計画全体に延滞をきたさないように配慮する。
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Research Products
(39 results)