2017 Fiscal Year Annual Research Report
Archaeological Research for meanings of the southern routes in Asia to emergence and diffusion of modern human
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15H03261
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 宏之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50292743)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 現生人類拡散 / 南回りルート / 後期旧石器時代 / アジア / 石器技術 / 年代測定 / モヴィウス・ライン / 適応行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東アジアを経て日本列島に現生人類が到達したルートとして有力視されているアジア南周りルートに所在する、後期更新世遺跡出土の資料等の考古学的データの分析を通して、その妥当性を具体的かつ実態的に検証することを目的としている。アフリカを脱した現生人類が列島に本格的に到達したのは後期旧石器時代開始期(約40,000年前)であるが、その主要な二つのルートのうち、アジア大陸中央部を通る北回りルートに比べて、大陸南縁部を通過する南周りルートに関する考古学的研究はきわめて少ない。 本研究の主要に研究方法は、以下の通りである。1)実見・観察・記録化および資料集成等を通じて、遺跡出土石器類の具体的な製作・運用技術構造分析を行い、2)現状では著しく不足している年代測定を実施し、遺跡現地踏査による地質編年の確定を通して資料の時間軸を整備する。3)民族考古学・生態考古学等に関する先行研究や代表者等の既存研究例、気候・環境データ等との比較・総合によって得られた、環境生態の異なる南アジア・東南アジア等の南周りルートにおける先史人類の行動戦略モデルを構築する。 そのため平成29年度は、南ロシア(11月)、韓国(1月)、カザフスタン(3月)の現地調査と資料の実見・観察・記録化を行った。また国内(北海道等)での比較資料調査を行った。先行研究・文献資料データベース作成と調査資料の分析も継続した。関連して、インド・ジュワラプーラム遺跡群で実施したOSL年代測定に関する学会発表を行った(7月)。なお平成28年11月に実施予定であったパキスタン調査を研究実施上の必要から東南アジア調査に変更したため、調整に時間を要し、繰越手続きの上平成29年5月にミャンマーの現地調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年5月に実施したミャンマー調査は、初めての本格的な旧石器時代資料の現地調査となり、現生人類がインドから異なる環境帯に最初に進出した地域での具体的な様相が明らかとなった。現地の担当者はミャンマー唯一の旧石器研究者であったため、平成30年度の学振外国人招聘研究者(長期、平成30年4月-平成31年1月、10ヶ月)によって東大に招聘し、共同研究を行なった。またデータベース作成も順調に進捗しており、現在アラビアからインドを経て東南アジア・中国南部・オセアニアまでも含めた範囲での集成がほぼ終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は研究最終年度にあたるため、研究の完成を目指す。 1)カザフスタン、インド、マレーシア、ロシア等の現地調査を実施する。調査にあたっては、現地の海外研究協力者の協力を仰ぎ、主として考古学資料の調査を行う。2)比較資料調査して、国内の後期旧石器時代初頭の遺跡出土資料の補足調査を実施する。3)考古学資料、各種の環境データ、民族考古学・生態考古学等のデータ集成とその分析・統合作業を完成させる。4)アジア旧石器協会(8月ロシア)、スヤンゲ国際会議(7月マレーシア)、韓国旧石器学会(10月韓国)等の国際会議にて、研究成果の発表を行う。5)年度後半に研究成果を統合して、南周りルート説の実態を考古学の立場から明らかにし、歴史的説明を行う(日本考古学協会静岡大会記念講演、10月)。
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Research Products
(11 results)